
安田教育研究所 代表安田 理氏

受験校を決めるためにもう何回か模試を受けたことと思います。模試にはいくつかの機能があるので、まずはそれを挙げておきましょう。
B 不得意なまま残されている教科・単元はないか発見する機能
C 答案作成する上での得点力をアップさせる機能
D 志望校の合格の可能性を探る機能
この4つの機能についてそれぞれ説明を加えておきます。
A 秋になると、みなが頑張りだすので、お子さんが努力していてもそうそう偏差値は上がりません。また、ほとんどのお子さんは回によってとってくる偏差値が大きく違ったりします。これではどこを受けたらいいかわからないと、アタマを抱えることになります。
回ごとに問題が違い、お子さんの得意・不得意とマッチしたり、ミスマッチしたり、模試当日に頭がさえていたり、集中力がなかったり……そんなことで力が100%発揮できることもあれば、60%しか出せないこともあります。ですから波があって当たり前なのです。「こんなんじゃ、どこにしたらいいかわからない」と動揺するのではなく、「これが普通のことなのだ」と、ドッシリ構えてください。
また、「偏差値を3ポイント、4ポイント上げないと〇〇中学は受けられないわよ」といった励まし方をするお母さんがよくいますが、これはお子さんには結構きついものがあります。結果的には同じことなのですが、ある先輩のお母さんはこういう言い方をしました。
「各教科5点ずつ上げていこうね」―4科で20点上がれば実は偏差値は3ポイント、4ポイントは上がるのです。いきなり「偏差値3ポイント」と言われると、「そんなのムリ~~ツ」となりがちなのが、「5点」だとお子さんは可能性があると感じられるのです。これからは頭を使ってアドバイスです。これからは言い方にも頭を使っていきましょう。
B 最初はこれをいちばん重視してください。わが子は「どの教科が弱いのか」、「とくにどの単元なのか」をチェックして、弱い教科、弱い単元を克服することが何より重要です。得意教科でさらに10点伸ばすのは難しいですが、弱い教科が平均レベルになればすぐ10点くらい上がります。
お子さんと話し合って復習対策を立ててください。どの教材(新しいものに手を出すのではなく、これまでやってきたものを使うことが原則)をどう活用して復習するか、スケジュールを含め、具体的に決めることが大切です。塾に通っていれば、弱い教科を担当している先生に相談してもいいでしょう。
C 模試の成績表が返却されると、どうしても保護者は「偏差値」や「合格の可能性」ばかり気にします。ですが、ぜひ答案にも目を向けてください。わが子がおかしやすいミスや、なぜ間違えたかなどをチェックすることで、各教科5点くらいのアップにはつなげられるものです。
例えば、設問に合った答え方が出来ているか、記述式解答の字数は制限字数の8割以上書いているか、誤字・脱字がないか、ハネ・ハライで減点されていないか、解答用紙に単位の記入がない場合には単位までちゃんと書いてあるか、計算ミスはしていないか……などです。こうしたものは案外クセとして身についてしまっていることがあります。このクセなどを早いうちに発見し、直しておくことが得点力アップには大変有効なのです。
D 模試について、次のようなことをおっしゃる保護者がいます。
「〇〇模試と××模試では、同じ学校でも3ポイントも違う偏差値が付いてくる。△△模試だと10ポイントも違うそうよ。〇〇模試はレベルが低いみたいね。」
模試で出てくる偏差値というのは、どのような集団が受けているかで違ってきます。
模試でつく偏差値の違いは、このようにあくまで受けている集団の違いからくるものなので、お子さんの志望校の合格可能性の判定にはどれがふさわしいのか(その志望校の受験者が大勢受けている模試か)、という観点で選べばいいでしょう。
お子さんの志望校が中堅校ならば、難関国私立中学受験者対象の模試を受ける必要はありません。へたに受けて、難しい問題ばかりで全く手が出なかったということにでもなれば、自信を失う基になります。
逆に、問題が難しい難関国私立中学を受験する場合には、標準的な問題の模試でいくら高得点を取れていても、合格の可能性は判断できないことになります。特定の有名な中学の場合には、大手塾が問題のスタイル、分量などを実際のものに合わせた「学校別オープン」などの模試を実施している地区がありますので、それを受けるといいでしょう。

模試では、志望校欄に学校名を書くことで、各校の合格の可能性を出してくれるので、勉強を進める上でひとつの手がかりになります。志望校欄には6つくらい校名を書けますが、そのうちひとつくらいは思い切って易しい学校を書くといいでしょう。いまの段階でも「合格可能性80%」と出れば、学校がどこであれ、子どもはうれしくなって前向きな気持ちになるものです。