京都大学では、「特色入試」というユニークな入試制度を導入しています。この入試には、京都大学を志望する高校生に、こんな意識を持って入学してほしいというメッセージが込められています。京都大学が求める学生像とはどのようなものか、中高時代にどんな学びを期待しているのか、理事・副学長(教育・情報・評価担当)の北野正雄先生にお聞きしました。
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工作が大好きでコンピュータも自作
科学技術に興味を持つようになったきっかけをお聞かせください。
北野 小学生の頃から、ラジオを製作するなど、工作が大好きでした。中学生になると、アマチュア無線の免許を取得したほか、鉄道模型づくりに熱中した時期もありますし、まだパソコンが登場していなかった時代に、パーツを買ってきて、きわめてプリミティブ(素朴)なものではありますが、コンピュータを自作した経験もあります。
すると、中高では、理科系の部活に所属されていたのですか。
北野 いえ、小学校4年生から水泳を始め、中学、高校と水泳部でした。冬はプールに入れないので、長距離走をやって、駅伝大会にも出場しました。部活動で良かったことは、やはり友人がたくさんできたことです。それが中高生活を豊かなものにしてくれました。水泳部の仲間とは、今でも交流が続いています。先輩とのつながりも貴重でした。母校(大阪府立北野高校)の場合、体育会的な厳しい上下関係はありませんでした。大学に入学した先輩が、指導に訪れることもあり、そんな際に、大学の学びの様子や、キャンパスライフの雰囲気を聞くことができ、とても参考になりました。
また、母校は、文武両道の骨太な教育を大切にしていました。男子は全員、縄跳びは二重跳び30回連続をクリアしないと帰宅できず、長距離走では13・6キロ走りきることが義務づけられていました。心身ともに鍛えられたと思います。
京都大学工学部を志望した理由は何でしょうか。
北野 実は、理学部物理学科と工学部電子工学科のどちらを選択するか、かなり悩みました。物理学科は、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹先生以来の理論物理の伝統があり、あこがれの気持ちを抱いていました。最終的には、大好きなものづくりにつなげるには、電子工学科の方がいいのではないかと考えました。
今振り返ってみると、入学時点の学科選択は、それほど大きな分岐点ではなかったことに気づきます。私の研究テーマである量子力学は、物理学とクロスする学問領域だからです。しかも、電子工学を学んだことで、研究に広がりが生まれたというメリットもありました。どちらの学科に進んでも、もう一方の分野の学びが閉ざされるわけではなく、再び交わることも多いということを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。