新中学生へのメッセージ

「入試に役立つか」よりも「もっと学びたいか」で進路選択を

京都大学理事・副学長(教育・情報・評価担当)
北野 正雄さん


TOPIC-3

自分で学びの環境を創り出す姿勢が求められる

新中学生に向けて、どのような中高生活を送ってほしいのか、アドバイスをお願いします。

北野 大学入試に直結するような勉強だけでなく、もっと広い意味の勉強をしてもらいたいと思います。部活動や、友人との付き合いも、大切な学びです。それから、自分が興味を持った分野をトコトン追究する機会も、ぜひ設けてほしいですね。

興味のあることが、なかなか見つからない場合もある気がしますが。

北野 自分が何に向いているのか、考え込みすぎて、結局、何もしなかったというのでは困ります。先送りにせず、とりあえず今、魅力を感じている分野にアプローチしてみようという決断も必要です。後で興味の方向性が変化してもいいのです。先ほど私の経験を申し上げたように、大学入学後でも、研究者になってからでも、いくらでも軌道修正は可能だからです。

SSHなどに採択されていない学校では、自分の興味を突き詰める環境に恵まれていないケースもあると思われます。

北野 その場合は、自分で学びの環境を創り出そうとする姿勢が求められます。それに、学びの機会は、学校教育の枠組みの中だけではありません。必要な情報を自ら探しに行くことが、本来の学びの姿なのです。本学では、教育に関する基本理念として「対話を根幹とした自学自習」を掲げています。多様な人々と触れ合い、自ら課題を見つけ、自ら調べて考える。そうして得られた知見こそが、次の学びにつながる大きなパワーになります。生涯を通じて重要な学びの姿勢と言ってもいいでしょう。

TOPIC-4

多様な大人と接する機会を与えよう

最後に、保護者へのメッセージをお願いします。

北野 子どもの意思、志を尊重して、ある程度の距離感を持って接することが大切です。繰り返しになりますが、大学入試ばかりに目を向けるのではなく、子どもが興味を持ったことを温かく見守ってほしいのです。「将来、苦労させたくないから、いい大学に進ませたい。そのためには、今は余計なことをしている余裕はない」と思われる保護者もいるかもしれませんが、そもそも、どの大学に入学しても、苦労のない人生なんてありません。

 それから、最近の子どもたちは、保護者、学校の先生以外の大人と触れ合わないままで育つケースが少なくありません。そのために、本学の学生でも、考え方がすごくローカルで、視野狭窄に陥っていることがあります。もっと多様な大人と接する機会をつくることが大切です。SSHなどの活動は、大学や企業の研究者たちとコミュニケーションする場が豊富で、第三者の大人の視点が得られるところに、最大の魅力があるのです。学校以外の活動の中で、子どもに適したものを探して、大人と接する場に積極的に参加するように促すことが、保護者の重要な役割になると考えています。

京都大学
理事・副学長(教育・情報・評価担当)
北野 正雄さん

1952年生まれ。京都大学工学部卒業。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士。京都大学大学院工学研究科教授、工学研究科長・工学部長、国際高等教育院長などを経て、2015年から現職。専門は量子エレクトロニクス。著書に『マクスウェル方程式-電磁気学のよりよい理解のために』などがある。

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