健康とは何かを追究する予防医学研究者として、健康寿命を伸ばすためのダイエットやリラックスの方法などについて独自の視点からの発言が注目されている石川善樹さん。最近は、分野を問わず難しい問題を解決することをテーマに仕事をされています。中高時代のどのような学びや気づきが現在につながっているのか、振り返っていただきました。
TOPIC-1
中学受験で挫折するも3年間でリベンジ成功
中学受験をされた経緯を教えて下さい。
石川 小学3~4年の頃に東京に引っ越してきたのですが、当時通っていた地元の公立小学校が荒れていたこともあって、中学受験をすることになりました。ただ、何をどう勉強していいか分からず、頑張ったら好きなだけゲームをしていいという約束につられて勉強していたように思います。
結果はいかがでしたか。
石川 行きたいと思っていた学校はすべて不合格でした。別の私立一貫校に不本意入学することになるのですが、「自分はだめだ、勉強ができないんだ」という挫折感を抱えたまま中学生になりました。受験が終わり、これでやっとゲームができると思っていると、すぐに母親に高校受験のための塾に連れて行かれました。中学入学を控えて楽しいはずの春休みから、もう高校受験のための勉強をさせられたわけです。
切れ目なく勉強することになったわけですね。
石川 ところが近所にできたばかりのその塾で、とてもすばらしい先生に出会うことになりました。これは後で知ったのですが、その塾の先生は母に次のように言ったそうです。「お母さんが介入し過ぎです。僕が面倒をみますから、もう一切口を出さないでください」。母親も偉かったと思いますが、本当にその日以来、勉強については一切口出ししませんでした。その先生のおかげでどんどん勉強が分かるようになり、勉強が楽しくなっていきました。部活に入っていなかったため、僕の中学時代は、塾とゲームと漫画の3年間でした。
TOPIC-2
優秀な仲間に出会い勉強のアプローチを変更
高校受験は上手くいきましたか。
石川 中学受験で落ちた学校に、今度はすべて合格しました。合格した学校のなかで一番近い学校が筑駒だったため通うことにしたのですが、ここで、再び挫折感を味わうことになります。中学3年間で成績が急上昇し、「自分はできるんだ」と勘違いしていましたが、さすがにトップ進学校です。自分がどう頑張っても太刀打ちできない能力を持った仲間の存在に打ちのめされました。しかし、今思えば、結果的に良かったのです。
どういうことでしょうか。
石川 英単語を一度見ただけで覚えてしまう人もいましたから、彼らとまともにやり合っても勝ち目はありません。そこで、自分が勝てるエリアを探そうと考えたわけです。言い換えれば、普通の受験勉強のスタンダードなアプローチから外れたのです。高校までの勉強は「では」が大きくものをいいます。「教科書では」「この説では」など、すでに分かっていることを、効率的に右から左へと変換することが勉強の王道です。しかし、大学以降の勉強は「とは」が中心になります。美しいとは何か、青春とは何か、正義とは何か、など「〇〇とは何か」という問いを立て、答えを出していかなくてはなりません。「では」の世界ではかなわないと思ったため、「とは」の世界に行こうとしたのです。このように言語化できたのはずっと後のことですが、当時は無意識にそんなことを考えていました。
具体的にはどのような勉強方法に切り替えたのですか。
石川 勉強方法の問題ではなく、意識の問題です。常に「とは」を考えるようになっていたため、高校の成績はあまり良くありませんでした。ただし、当時の東大の入試問題では「とは」が問われていました。僕が受験した1999年の国語の第1問は、突き詰めれば「身体とは何か」が問われていましたし、第2問は「青春とは何か」を述べるような問題でした。英語に至っては「歴史とは何か」に答えなければなりません。ちなみにゲームも真剣にやれば「とは」の世界に行き着きます。ゲームであっても、いやゲームだからこそ真剣に取り組むことが大切だと思います。当時、ゲームに本当に真剣に打ち込んでいた友人たちは、現在プロゲーマーをはじめ、各界で大活躍しています。