新中学生へのメッセージ

「正しい人生を生きるか、面白い人生を生きるか。」

予防医学研究者・博士(医学) 石川 善樹さん


TOPIC-5

偶然の出会いを全力で楽しめ

現在のお仕事に、中高時代の学びが役立っている部分はありますか。

石川 現在は、「難しい問題を解く」ということが大きなテーマになりつつあります。様々な分野から持ち込まれる難しい問題を解決するお手伝いをするわけですが、その原点には高校時代の挫折経験があります。問題が難しいのは、普通の考え方で解こうとするからです。であれば、普通ではないアプローチをすればいいわけです。そのポイントになるのが「とは」という問いです。「このビジネスモデルの成功とは何か」「ダイエットの成功とは何か」といった発想をすることが問題解決につながっていくからです。

新中1生に、何かアドバイスをいただけますか。

石川 中高時代にこんなことをしておくと良いというのは、人生を「因果」でみる発想です。しかし、人生では「因縁」も非常に大きく影響します。たまたま出会ったご縁によって人生がガラリと変わることだってあるからです。人は、人と人のつながりのなかで生きています。身近な人に信頼されない人は、誰からも信頼されません。ですから、まわりの人に信頼されるような人間になることが、まずは大切だと思います。そのためにも、たまたま入った学校で、たまたま出会った人たちと、面白いと思えることを真剣にやってほしいと思っています。

保護者からのアドバイスで覚えていることはありますか。

石川 幼い頃から父に繰り返し言われていた言葉が2つあります。1つは「正しい人生を送りたいのか、面白い人生をいきたいのかをよく考えなさい」というもの、もう1つは「医師免許だけは取るな」(笑)でした。医師免許を取ってしまうと、正しい人生を歩んで行かざるを得ないので、本当にやりたいことができたときに、その免許が邪魔をするからと。重要な選択のときには、これらの言葉に従いました。その結果、面白い人生を歩んでいます。

保護者のみなさんにもメッセージをいただけますか。

石川 保護者の方は、子どもに何を言えばいいのか、させてあげればいいのかという意識をお持ちだと思いますが、それで子どもが変わることはまずないと思った方がいいでしょう。子どもに影響を与えるのは「親の生きざま」です。子どもがもう中学生になるのですから、「そろそろ子どもに依存せず、ご自身の人生を生きてください」ということです。親が人生を楽しく生きていれば、子どもはそこからいろいろなことを学ぶはずです。ただし、いい意味での洗脳は大切です(笑)。子どもがそのとき聞き入れることはまずありませんが、言い続けているうちに無意識に染み込み、いつか芽が出るかもしれません。

石川善樹(いしかわ・よしき)さん

1981年広島県生まれ。筑波大学附属駒場高校出身。2003年東京大学医学部健康科学・看護学科卒。同大学大学院を修了後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。自治医科大学博士(医学)取得。株式会社キャンサースキャンおよび株式会社CampusforHの共同創業者。近年は、予防医学の枠を超え、多彩な分野での問題解決に挑む。テレビ・雑誌などへの出演も多数。

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