中学校からはじまる新科目の勉強法

中学校からはじまる新科目の勉強法

 中学生になると、算数の代わりに数学が始まりますし、本格的に英語の授業もスタートします。どんなことを学ぶのか、勉強についていけるのか、不安に感じている人もいるかもしれません。
そんなみなさんに、勉強のコツや、成績を伸ばすアイデアなどを紹介します。

「間違い」は否定せず、成長の糧として愛しもう! 「高校への数学」(東京出版)編集長 堀西 彰さん「間違い」は否定せず、成長の糧として愛しもう! 「高校への数学」(東京出版)編集長 堀西 彰さん

算数をいったん忘れて数学的思考を身につける

Q 算数と数学が異なるのは、どんな点でしょうか。

 算数は具体的な物を扱うので頭の中でイメージしやすいのですが、数学は抽象的な世界になるので、理解するのが難しくなります。たとえば抽象的な表現として初期の単元では𝑥𝑎𝑏などアルファベットを使った文字式や方程式が登場します。「𝑥って何?」と生徒から聞かれたとき、わかりやすく説明するため、「𝑥は答えだよ」と話しています。検算の式を作れば、それが方程式になるのです。また、算数と数学の違いの象徴を、私は「」を用いて説明しています。たとえば小学校では「25-8=17」のように、計算した結果の答えをで表します。数学の方程式は意味合いが違い「(𝒎+𝒏)×3=3𝒎+3𝒏」のように、左辺と右辺が同一であることを表します。算数は左から右への一方通行ですが、数学の等式は左右どちらでも行き来できます。こういった考え方が身につくと、数学の理解がぐんと進みます。

Q 数学でつまずかないようにするには、どういう点に気をつければいいでしょうか。

 中学受験を経験したみなさんは、「この問題は鶴亀算で解く、これは旅人算で解く」などと、教えられたと思います。中学では同じような問題を、方程式を使って解きます。しかし塾で鍛えられた生徒は、方程式を使わなくても算数で習ったやり方で簡単に解けてしまうので、算数ができる生徒ほど方程式が身につかないという、おかしな現象が起きることもしばしばです。中学2年まではそれでも適応できるのですが、中3の二次法的式でxの二乗が入ってくると、算数では解けません。数学を身につけるためにもいったん算数で習ったやり方は忘れて、スタートの段階で文字式や方程式をしっかりと身につけてください。算数を学んだことは、決して無駄ではありません。算数は考え方を鍛えるのにとても優れた教科です。中学受験で算数をしっかりやった生徒は、大学入試で差がつくとも言われています。また数学には「ゆえに」「解を求めよ」など、日常では使わない独特の用語や言い回しが出てきます。できるだけ早く慣れるようにしてください。

Q 小学校とは違う勉強法がありますか。

 小学校の時には解答欄に答えを書いて、正解なら丸をもらっていましたね。しかし数学はなぜその解答に至ったのか、必ず途中式も書かなければいけません。特に大学入試の記述式では途中経過も評価の対象になり、答えが間違っていても、途中式が正確であれば満点に近いような点数をもらえることもあります。数学の問題を解くときには、必ず解答に至るまでの痕跡を残すことが大切です。

間違いは宝物。気づきが成長に繋がる

Q つまずいた時には、どうすればいいですか。

 実はつまずきで多いのが、早とちりです。例えば2の3乗を「2×3」だと思い込み、勘違いをしてつまずいている生徒も多いです。基本に立ち返って、慎重にチェックしてみましょう。子どもがうまくいっていない時こそ、お父さん、お母さんの出番です。子どもの変調に気づくのはやはり親。おかしいな、と思ったらじっくり話を聞いて、具体的に「ここが間違っているよ」と原因を指摘してあげるといいですね。その時、決して叱ったりしないでください。答え合わせをしたとき、間違っていると消しゴムで消したり鉛筆で塗りつぶす子どもがいます。間違いにマイナス感情を持っているからでしょう。間違いは成長の糧になります。教訓として次に生かすことができれば、数学は必ず伸びていきます。

Q 数学が好きになるためには、どうすればいいですか。

 私が数学を好きになったきっかけは、親が購入した幾何の問題集でした。図形の不思議さに魅了され、もっとやりたいと思いました。押しつけは逆効果ですが、数学に関する本をリビングに置いたり、博物館などへ出かけて好奇心を刺激するのも一つの方法だと思います。中2の範囲まで学習したら、弊社の月刊「高校への数学」もお勧めです。講義や演習の他に、読み物やパズルなどのお楽しみのコーナもあります。数学が得意なお子さんなら、難易度の高い「学力コンテスト」や「高校オリンピック」に挑戦してはいかがでしょうか。数学の醍醐味を味わうためには、学校の勉強とは別に「図形(平面幾何)」「整数」「場合の数」を極めると、俄然数学の面白さがわかります。図形は、すでに成り立つことが分かっている性質を用いて、新たな性質を見いだす作業。こういった訓練を重ねると、論理的な発想力が鍛えられます。整数や場合の数も同様です。中学生という年代は、これらの能力が飛躍的に伸びる、いわば「ゴールデンエイジ」。ぜひこの時期に、3単元のひとつでもいいですから、じっくり取り組んでみてください。

Q 最後に、新中1年生にエールをお願いします。

 冒頭で述べたように、数学は文字式や方程式など算数にはない新しいやり方が導入されますが、初めはそれほど難しいことをやらないので、スタートでしっかり取り組めば大丈夫です。数学は思考力や論理力を身につけるのに適した教科です。また数学は基本的に、世界中で通じる一種の「国際的な共通言語」と言えます。今後ますます進むグローバル社会を生き抜くためのコミュニケーションツールとして大きな武器になり得ます。理系だけでなく文系に進む生徒も、是非数学を楽しんで、一生ものの思考力を身につけてください。

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