森上先生に聞く中高6年間の過ごし方

挑戦することを恐れず、自分だけの体験を積み重ねて充実した6年間を過ごそう 森上教育研究所 代表 森上 展安さん

この4月、中学生になる皆さんは今、新生活への期待に胸を膨らませていることと思います。一方で心配や不安もあるかもしれません。中高一貫校に入学する皆さんに、6年間の過ごし方についてアドバイスします。

英語4技能はどれも大事中学3年間が勝負になる

 中学生になる皆さん、進学おめでとうございます。皆さんにはぜひ充実した6年間を過ごしてほしいと思います。まずは、中学・高校で学んだその先に待っている大学入試についてお伝えしましょう。

 皆さんも新聞やニュースで目にしていると思いますが、日本の入試制度は2020年度から様変わりします。先行きが不透明なこの時代、多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていくには、これまでのような知識偏重の教育では不十分です。そこで文部科学省は、学習指導要領を順次改訂し、これまで重んじられていた「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」を重視した学校教育を進めることを決定しました。併せて大学入試制度の改革を決めたのです。

 ただし、2020年度に予定されていた大学入試改革のうち、英語の民間試験の活用は延期されました。民間試験を使って「読む・聞く・話す・書く」の4技能を評価する仕組みはいったん先延ばしになりましたが、4技能をバランス良く身につけることの大切さが変わったわけではありません。同じく2020年度から導入される新学習指導要領に合わせて、特に「話す」力を評価する重要性は多くの専門家が指摘しています。

 話す力を身につけるのは中学での3年間が勝負ということも多くの教育者や英語学者が強調しているところです。英語は中学での学習がとても重要なのです。たとえば東京都では、2021年度から都立高校の入試でスピーキングテストが導入される予定です。タブレット端末やヘッドセットを使って解答を録音する方式が検討されているようですが、その結果を評価して入試に加算する形になります。話す力を含めた英語の4技能が今後ますます重視されるのは明らかです。皆さんにも英語の勉強はしっかりしてほしいと思います。

知識を活用する思考力とことばで伝える記述力を

 新しい大学入試制度では、大学入学共通テストの国語と数学の記述式問題についても取り沙汰されています。採点方法が問題となり、これにも延期を求める声がありますが、国立大学の二次試験ではもともと記述式問題が出題されています。特に理系の場合は記述力が求められます。共通テストで必要とされているのは、知識を活用する力。思考力を育てることがこれからの学力の主要な柱になります。

 そのためには、やはりことばで伝える力が不可欠です。学ぶこと全般において、ことばをやりとりすることで力が形成されます。そういう意味でも記述力はとても大きな要素になるでしょう。大学入試だけではなく、たとえばレポートを書く機会が増えるなど、ふだんの学習でも重要度は高まるはずです。

 記述には自信がないという人もいるかもしれませんが、方法論を身につけさえすれば、難しいことではありません。特に中高一貫校の場合、6年間を通じて学ぶので、恐るるに足らずです。最近の小学生はプレゼンテーションがとても上手です。「表現する」という意味では記述も同じ。思考する力を伸ばしつつ、自分の意見をしっかり伝えることを大事にしてください。

 大学入試制度は大きく変わります。しかし、不安を感じる必要はありません。皆さんは今後新たな学習指導要領の下で中学・高校での教育を受けることになり、2024年度からはその学習指導要領に沿って大学入試が行われるからです。これからの中高6年間で学ぶべきことをしっかり身につければ、大学入試でも必ず結果がついてくるはずです。

あこがれる気持ちを大切に「なりたい自分」を探す

 新しく始まる中高6年間の学校生活ではまず、先輩との出会いを大切にしましょう。中1生から見ると、高3生はすごく大人に見えると思います。しかし、その落差が中高一貫校の良さです。誰かにあこがれて、「ああいうふうになりたい」と思う気持ちが大事なので、中学に入学したらぜひ先輩のなかに「ロールモデル」、すなわち「なりたい自分」を探してみてください。クラブでもいいし、勉強でもいい。かっこいいプレゼンテーションをする先輩にあこがれてもいいと思います。あこがれの先輩を目標にすることで、学校生活はより楽しくなります。少し年上のお兄さん、お姉さんとの出会いを大切にしてほしいと思います。

 中学の間は音楽や美術といった情操教育にも積極的に取り組んでください。非認知スキルとも呼ばれる情感の部分をいかに養うか。中学時代にこそ伸ばしてほしいと思います。もう一つ大事なのは、中高6年間でどうやって自分自身を成長させるかです。それには自分で自覚することが大事です。「成長しよう」「成長したい」と思う気持ちを持ちましょう。

 そのためにはさまざまな経験や体験が必要です。自分からいろいろなことにチャレンジしてください。特に中1や中2でリーダーシップを経験すると、大きく成長できます。みずからリーダーになる体験は大切です。思い切ってチャレンジしてみることが皆さんの成長につながります。

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