森上先生に聞く中高6年間の過ごし方

挑戦することを恐れず、自分だけの体験を積み重ねて充実した6年間を過ごそう 森上教育研究所 代表 森上 展安さん

この4月、中学生になる皆さんは今、新生活への期待に胸を膨らませていることと思います。一方で心配や不安もあるかもしれません。中高一貫校に入学する皆さんに、6年間の過ごし方についてアドバイスします。

物語の主人公のつもりでいろいろな体験をしよう

 海外研修や留学も大いにプラスになります。日本人のことばの伝え方は非常に静かですが、海外の人たちは身ぶり手ぶりを交えて表情豊かに語りますよね。文化の異なる環境で、自分が変わっていく体験にはとても意味があります。教育とは変化をすることなので、自分が興味を持ったことにはどんどん挑戦してほしいと思います。

 学習面も同じです。英語については先ほども述べましたが、中学の間はあらゆる面において吸収力のある時期です。何を学んでもよく覚えられるし、すぐに使えるようになります。勉強するにはまさしくここぞというチャンスです。学校ではテストがありますし、英語の検定試験などを受けることもあると思います。学んだことがきちんと定着しているかどうか、勉強の質に対するチェックをしていくことも重視しましょう。読書の習慣も身につくのは中学までといわれます。本を読む癖も楽しみながらつけていくことをお勧めします。

 新しい大学入試では、現在の調査書が「eポートフォリオ」という電子データの形にまとめられ、さらに重要性が増します。自分自身の探究活動や課外活動、資格・検定等の実績をまとめたのが「ポートフォリオ」、それをインターネット上に蓄積するのが「eポートフォリオ」です。皆さんは、中高6年間をかけて何をやってきたのか、自分だけのストーリーをつくることが大切になります。勉強以外にもぜひ自分だけの体験を積み重ねていってください。

 たとえば欧米の教育では、サービスを学ぶという意味でボランティアが大きな柱になっています。日本では必ずしもそうではありませんが、国際交流を体験すれば、ボランティアや宗教が彼らにとって非常に重要な要素だとわかります。そういったことに気づくのが大事。それを自分の生き方の軸にどのように置くかを考えることも必要になってきます。

 ポートフォリオを書くときは、その軸をつくることが大切です。初めは何もなくてもいいので、自分が物語の主人公になったつもりで軸をつくっていきましょう。クラブでもボランティアでも何でもいいのです。ただ、やらされてやるようでは意味がありません。先輩たちに学びながら、身の周りのことを〝自分ごと〟として考える姿勢を身につけてほしいと思います。

中学からは主体性が必要勉強のスタイルも大転換を

 中学受験では長い時間、机に向かってきたことと思います。覚えないといけないことがたくさんあったと思いますし、〝やらされ感〟を持って勉強してきた人も少なくないと思います。しかし、中学・高校では自分で勉強するスタイルを身につけなくてはなりません。そこは大転換。自覚的に取り組まなければできないことです。

 主体性といえばいいでしょうか。勉強はもちろん、学校生活全般にどう取り組むか、自分で考えることが重要になります。保護者の方はついつい口を出したくなると思いますが、お子さんの主体性を育てていく姿勢を持ってほしいと思います。その分、学校で良い仲間をつくるための環境を整えることをサポートしてあげてください。友だちを自宅に招いたり、家族ぐるみで付き合ったり、子どもたちの出会いの場を楽しく演出してあげるといいでしょう。一方で、親は一歩後ろに下がって、前に出ないという意識も必要かもしれません。お子さんが自分で考え、自分の考えを話せるようにサポートし、楽しく取り組んでほしいと思います。

 中学生になる皆さん、間もなく新しい毎日が始まります。中高6年間でどんなストーリーを描くかは自分次第です。皆さんの未来に期待しています。

森上教育研究所 代表 森上 展安さん

早稲田大学法学部卒業後、進学塾塾長などを経て、1988年に私立中・高や学習塾を対象とするコンサルタント「森上教育研究所」を設立。現在は同研究所の代表を務める一方、受験や中高一貫教育についての豊富な情報と経験を生かし、評論・分析の分野でも活躍。ほぼ毎週、中学受験の保護者を対象に、著名講師陣による「わが子が伸びる親の『技』研究会」(oya-skill.com)を開催している。

おすすめの記事