森上先生に聞く 中高6年間の過ごし方

中高一貫校だからこそできる<br>友だちや先輩との活発な交流を通して<br>新しい価値観と知識を身につけよう 森上教育研究所 代表 森上 展安さん

この春、中高一貫校に進学する皆さんは、これから始まる新生活に胸を躍らせていることでしょう。充実した6年間を送るためには、どのようなことを意識するべきなのでしょうか。取り組むべき学習や活動について、ポイントをお伝えします。

アウトプット重視の学習で確かな英語力の養成を

 新中学1年生の皆さん、進学おめでとうございます。昨年度は、新型コロナウイルス感染症の流行により、これまでの行動様式が一変する、大変な1年となりました。異例尽くしの受験生活を経て、志望校の合格を手にしたときの皆さんの喜びは、さぞかし特別なものだったろうと思います。

 さて、今回のコロナ禍では、人の動きが大きく規制され、これまで当たり前のように行われてきた国外への移動が、容易にはできなくなりました。しかし、その代わりに、オンラインを活用したコミュニケーションは、以前より身近なものになりました。物理的な距離が取り払われ、海外とのやり取りが簡単にできるという今の状況は、ある意味で、国際化の進んだ姿といえるかもしれません。

 そんな時代だからこそ、皆さんに身につけてもらいたいのが、グローバルな視野です。日本の若者は、よく「内向き」と評されますが、これからの国際社会を生き抜くためには、世界の若者と対等に渡り合える国際感覚が必要になります。

 そこで求められるのが「確かな語学力」です。残念なことに、日本の若者の英語力は、アジア諸国のなかでも劣位にあります。ですから、中1~2の間は、英語の基礎固めにしっかり力を入れること。そして、拙い英語であっても、とにかく機会を見つけて話すことが大事です。インプットだけでなく、アウトプットを重視した学習に、日常的に取り組んでほしいと思います。

得意科目と関連づけながら数学の学習を楽しもう

 もう一つ、日々の積み重ねが重要な教科に、数学があります。皆さんも、中学受験を通して、算数には地道な取り組みが必要だということを、身をもって理解したと思います。しかし、中学入試に求められていたのは、算数そのものの楽しさを味わうことよりも、「問題文を正しく読み取る」「計算ミスをしない」といった、確実に点数を拾うためのスキルではなかったでしょうか。

 これから、大学受験レベルの数学と相対するには、中高6年間で、数学の楽しさを知ることができるかどうかが大きな鍵となります。大学受験で課される数学には、もっと俯瞰的な視点で問題と向き合うことが求められるからです。

 数学は、一度つまずくと、挽回するのがなかなか難しい教科です。ですから、小さなつまずきであっても放置せずに、なるべく早めに理解につなげることが大切です。そして、探究的な姿勢を失わず、「数学を得意科目にしよう」「問題を楽しもう」という気概を持って、取り組んでほしいと思います。

 数学を楽しみながら学ぶコツは、自分の得意教科と関連づけて学習することです。たとえば、社会が得意であれば、資料に記されている数字をもとにグラフを描いてみたり、国語が得意であれば、小説や現代文を読むときに、人間関係や意見の対立を図にして整理してみたり。このように、論理立てて思考する習慣をつけるだけでも、数学への苦手意識は薄まります。

 また、こうした作業は、独りで黙々と取り組むのではなく、できれば友だちと意見を出し合いながら進めることをお勧めします。よく「主体的に考える」と言いますが、いくら主体的に考えても、考えの積み重ねが少ない間は、独りで頭をひねっても、良いアイデアは生まれてこないもの。友だちと考えを出し合いながら、試行錯誤を繰り返すことで、自然と力がついてくるはずです。

中2までに経験してほしい リーダー役のポジション

 学習面以外にも、皆さんに積極的に取り組んでほしいことがあります。それは、何かしらのグループで、リーダー役のポジションを務めることです。わたしはこれを、遅くとも中2までに経験しておくのが望ましいと考えています。というのも、15歳までに一度もリーダー役を経験したことがない子は、それ以降にリーダー役を任されても、うまく立ち回れない場合が多いからです。クラスや部活動、あるいはそれよりも小さいグループでも構いません。仲間の上に立つ機会を意識的に増やしてほしいと思います。意見の異なるメンバーをまとめる経験は、自分が補佐役に回る場面でも役に立つはずです。

 そして、もう一つ心がけてほしいのは、身近にいる先輩をよく観察することです。中高一貫校の何が魅力かと問われれば、年齢の近い先輩が身近にいるという点に尽きます。中1のときに出会う「ちょっと年上の大人」というのは、とてつもなく大きな影響力を持つものです。先輩だけでなく、若い先生でもいいでしょう。そうした「ちょっと年上の大人」が何を考えているのか、何に興味を持っているのかを知ることは、何よりの勉強になります。ですから、部活動や委員会に積極的に参加し、「すてきな大人」との接点をたくさん持ってください。これこそが、中高一貫校に進学するメリットであり、皆さんを大きく成長させてくれる糧になるはずです。

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