開成中学校・高等学校 野水 勉 先生

特別講演(2)
英語力を伸ばし、国際的なリーダーシップを

開成学園の歴史は、佐野鼎(かなえ)先生が幕府から派遣された遣米使節団と遣欧使節団に加わり、教育こそが日本の近代化に重要と考えて、1871(明治4)年に共立(きょうりゅう)学校を創設したことに始まります。初代校長には、後に大蔵大臣、そして内閣総理大臣を務めた高橋是清先生が就かれました。来年150周年を迎えるに当たり、現在、記念行事を進めており、来年6月には高校の新校舎や新体育館も竣工予定です。

開成学園は教育理念として、「質実剛健」「自主自立」「進取の気性と自由」、そして「ペンは剣より強し」の四つを掲げています。これらの理念を反映して、自立した強い精神力を持ち、飾らない人柄によって多くの人の信頼を集め、率先して新しい分野を切り拓いていく人材を育成していくことを、長年にわたって目指しています。

学園の教育方針ですが、まずは楽しく伸び伸びとした学園生活を送ること。そして、個性を磨き、集団・社会の一員として自分の役割を果たす、たくましい大人に成長すること。また学校行事は、自主的な組織運営を学び合う場として、生徒の自主運営を基本としています。

開成は勇壮な運動会が知られていますが、運動が苦手な生徒も気後れする必要はありません。競技においては全員に何らかの役割があります。競技外でも、運動会全体の運営、審判団、アーチ制作、応援歌やエールの作曲などさまざまな才能を生かすことができ、運動が苦手な生徒にもたくさんの活躍の場があります。だからこそ、卒業後も、お互いが開成の出身であることが分かると、運動会が共通の話題になるのです。

開成は1学年、中学300名、高校400名の比較的生徒数の多い学校ですが、個性あふれる同級生同士、そして先輩・後輩と交わるなかで、競い合い、磨き合い、切磋琢磨していく環境にあります。そして、部活動、同好会、研究会、委員会活動を幅広く奨励しています。運動部は22、文化部は29、同好会は21と多岐にわたり、さらに今年新たにヒップホップ同好会、暗号研究同好会、競技かるた同好会、アームレスリング同好会が加わりました。生徒の自発的かつ自主活動が原則ですが、必ず顧問の先生を依頼して、顧問の先生の指導監督下で活動しています。

本校では毎年、いじめがないか、年2回アンケート調査を行うとともに、生徒の皆さんが学園生活を楽しく感じているか、調査を行っています。「楽しい」「まあまあ楽しい」「あまり楽しくない」「楽しくない」の四つの選択肢があるのですが、中1・中2では98%以上が「楽しい」「まあまあ楽しい」と答えています。高3でも94%以上が同じように回答しています。なかには勉強のみが楽しいという生徒もいるかもしれませんが、多くは、学校行事や部活動、同好会活動、委員会活動などの課外活動を楽しいと感じてくれているのではないかと思います。

開成の教育の特色としては、個性豊かな教員が、個性にあふれた自主教材を用いた高レベルの教育を提供していることが挙げられます。大学における研究の一端を紹介したり、独自の研究や教材を紹介したりして、教科書だけでは満足しない生徒たちの知的欲求に応じています。また、教員が学年団を組み、中学1年から高校3年まで6年間、ほぼ同じ顔ぶれの教員がきめ細かい生徒指導を行うことも特色の一つでしょう。

本校では英語教育にも力を入れており、海外大学入学も視野に入れた英語教育、さらに入学支援を行っています。最近は海外大学への直接入学を目指す生徒も少なくなく、毎年10名程度が海外の有力大学への直接入学を実現させています。英語を担当するのは、専任と非常勤を含めて、7名が英語を母語としたネイティブの教員で、日本人教員もほとんどが英語での授業が可能です。実践的な英語力を伸ばすための取り組みとして、さまざまな専門分野の講義を英語で行う中3の英語学校のほか、高校生を対象に、通常授業後の7限と8限の時間帯に、自由参加の高校英語特別講座などを毎日開講しています。

英語力の具体的な指標として、英語で議論ができる最低限のレベルであるTOEFL-iBT80までは高校卒業までに身につけてほしいと考えています。このレベルに達すると、日本の大学に進学しても、交換留学制度があれば、半年から1年間の交換留学が容易に実現できます。ただし、海外のトップ大学へ直接入学するためには、さらに1段レベルの高い英語力が必要です。

受験生の皆さんには、この新型コロナウイルスの異例な事態に動ぜず、健康を維持しながら、冷静に、地道に、知力を積み上げていただきたいと思います。仮に合格につながらなかったとしても、それを糧にしてその後に成功した人はたくさんいます。努力の過程こそが貴重な財産です。開成学園は皆さんをお待ちしています。

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