新中学生へのメッセージ

TOPIC-4

教育分野で貢献できるクリエイターをめざしたい

順風満帆のようですね。

松丸 確かに自分のやりたいことを仕事にしているので、仕事をしているという感覚はほとんどありません。謎解きを作るという自分の核がはっきりしていて、そこを基準に自分のしたい仕事、できる仕事を考えているため、ストレスもほとんど感じません。ただ、現在、テレビに出る「芸能活動」、謎解き問題を作る「クリエイター活動」、会社を経営する「社長業」の3つの仕事を持っているため、とにかく時間が足りません。クリエイターとしての幅を広げるには、ゲームや漫画なども含めて面白いことをインプットする時間が必要なのですが、その時間がなかなか取れないのです。自分のための時間はどうしても深夜になってしまい、体に負担がかかることが一番の悩みです。

謎解きが大きなブームになっています。

松丸 現在はクイズブームで、謎解きもクイズだと思われているようですが、僕はクイズだとは思っていません。クイズは知識があれば解けますが、謎解きは新しい発想や閃きがないと解けないからです。謎解きが注目されているのは、こうした発想や閃きの力が、子どもたちの教育にも役立つのではないかと期待されているからだと思います。

今後の抱負についてお聞かせください。

松丸 新しい学習指導要領では、思考力を使って、答えのない課題に挑んだり、自分の頭で考え抜いたりすることが求められています。しかし、現在の教育機関でこうした思考力を鍛える問題を作るのは、かなり難しいのではないかと思います。だからこそ、“知識ではなく、発想や閃きで解ける”謎解きを作れる僕たちが、強みを発揮できるのだろうと思っています。教育に関してはまだ素人ですから、今後は教育関連の勉強も進めながら、教育分野で貢献できるクリエイター集団をめざしていきたいと考えています。また、謎解きには世界大会もありますから、グローバルな活躍も視野に入れています。

TOPIC-5

人と違うことが価値を持つ時代になる

新中1生に伝えたいことはありますか。

松丸 「自分は何をやったら楽しいのか」「どんなときが幸せなのか」を大切にしてほしいと思います。僕は「自分がやりたいことをやっている時間が多いこと」が幸せだと思っていますが、そのカタチは人それぞれで、「お金を儲けること」が幸せな人もいれば、「友だちと一緒に過ごすこと」が幸せな人もいます。自分にとって何が幸せなのかをはっきりさせて、そこに全力を注げるような生き方をしてほしいと思っています。

やりたいことをし続けられる人は少ないのではないでしょうか。

松丸 確かにいろいろな要素が邪魔をします。そんなことが職業になるのだろうかという不安や、周りからどう見られるのかといった不安などで、人と同じような道を進みがちです。しかし、生まれてから死ぬまでの間に「幸せだった」時間が多い人の方が、幸せなのです。お金とか世間体などは後から考えればいいことですから、まずは自分が楽しくなることを基準に考えてほしいと思います。

保護者へのメッセージをお願いします。

松丸 時代は変わりつつあります。お金の話でいえば、これから先はみんなと同じことをやっていればいるほど、どんどん儲けられなくなる社会になっていくと思います。AIや検索エンジンは今後もどんどん進化しますから、知識は簡単に手に入るようになります。知識ベースでは誰もが同じような条件になります。そうなると、まったく新しい発想、まったく新しいアイデアを持っている人の方が高い価値を持つようになります。いわゆる「オタク」や「浮いた存在」と思われていた人の方が、大きな価値を持つ可能性がある時代になっていくのだと思います。

子どもにはどのように接すればいいのでしょうか。

松丸 一言でいえば、子どものやりたいことの芽を摘まないでほしいということです。子どもは一人ひとり楽しいことが違います。楽しいことに集中すると、大人が考えられないスピードで物事を吸収して成長し、その分野で飛び抜けた力を発揮するようになります。個人的には、才能は興味が鍵になると思っています。興味があることは楽しいので、努力と思わずに努力を続けることができます。それが結果的に才能として開花するのだと思います。ですから、早めに子どもの「好き」を見つけてあげることが大切で、そのために様々な選択肢を紹介してあげることも必要でしょう。

とにかく「楽しむ」ことが大切だというわけですね。

松丸 僕は「そろばん教室」と「カードゲーム」は同じだと思っています。カードゲームも頭の中でけっこう計算しないと勝つことができません。そろばんが嫌いな人でも、楽しいゲームでなら、知らないうちに計算力が身につきます。同じ力を修得するなら、少しでも楽しい道を選んだ方がいいと思います。

謎解きクリエイター
RIDDLER株式会社代表取締役
松丸 亮吾(まつまる・りょうご)さん

1995年千葉県生まれ。麻布中学校・高等学校卒。東京大学入学後、謎解き制作サークルの2代目代表に就任。2019年、同サークルのメンバーとRIDDLER株式会社を設立、代表取締役に就任。謎解き問題の制作を中心に「考えることの楽しさ」をより多くの人に知ってもらう活動を展開。多くの出演番組を持ち、著・共著、監修も多数。

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