第3部 入試対策セミナー
自発的学習のススメ 3校の入試対策の決め手

難関校である麻布、慶應普通部、早大学院に合格するためには、どのような力をつけていく必要があるのか、データを基に解説します。

まず3校の入試状況について見ておきましょう。各校とも入試日は2月1日午前で、学科試験は4教科です。試験時間と配点は、麻布の国語・算数が60分・60点、理科・社会が50分・40点。慶應普通部の国語・算数が40分・100点、理科・社会が30分・100点。早大学院の国語・算数が50分・100点、理科・社会が40分・80点。早大学院はやや理社の配点が低く、麻布はさらに理社の配点が低くなります。慶應普通部は学科試験以外に個人面接・体育実技・報告書が合否判定の対象になり、早大学院はグループ面接と報告書も対象になります。麻布のみ、学科試験の点数だけで合否が決まります。

では、3校に合格するための学力について、麻布から見ていきましょう。参考にしたのは、小6を対象に昨年9〜12月に4回実施した「合格力判定サピックスオープン(模試)」の4教科のデータです。麻布の合格者・不合格者の偏差値分布を見ると、2つの山が重なり合って見えます。2つがこれだけ近づいているのは、合格者と不合格者の間にそれほど点数の差がなく、1〜2点が合否を分ける厳しい入試だったことがわかります。麻布の入試問題は思考力・記述力を問う設問が多いので、過去問などで日頃から記述問題の対策をしていないと難しかったのかもしれません。

次に、慶應普通部です。合格者と不合格者の山は麻布ほど重なっておらず、一定のボーダーラインが見てとれます。試験時間は他校に比べて短めですが、だからといって平易な問題ではなく、思考力を問われるクセのある設問が多く見られます。個人面接、体育実技、報告書も合否判定に使われますが、まずは4科の学力を高めることが必要です。

早大学院は特に厳しい入試でした。前年は合格者と不合格者の山がもう少し離れていたのですが、今年は両者の山が中央付近で重なっていて、ボーダーライン上で涙をのんだ受験生も多かったようです。偏差値は麻布、慶應普通部に比べて若干低めに出ていますが、これは早稲田、早実、早大学院の入試日が同じ2月1日で重なっており、早稲田志望の受験生が3つに分散するためです。また年によって、3校のうちのどの学校に人気が集中するかも変わってきます。

各校の併願パターンも見ておきましょう。麻布は試験時間が長いので、1日午後入試を見送る人が多く、他校を受験する人は少数派です。その中で併願の多かったのが東京都市大付、麻布から距離的に近い広尾学園、1教科で受験できる巣鴨と世田谷学園、算・国または算・理で受験できる東京農大一の順でした。2日午前は本郷、麻布と同様に思考力・記述力重視の栄光学園が、例年併願校として人気です。

慶應普通部も試験時間が長いため、1日午後は少数派ですが、東京都市大付、山手学院、東京農大一、世田谷学園、広尾学園が挙がっています。2日と3日は同じ慶應を併願する人が多く見られます。なお、慶應中等部と慶應湘南藤沢は1次合格者のみ2次試験があります。

早大学院も1日午後の受験者は少数ですが、併願が多いのは東京都市大付、東京農大一、國學院久我山、巣鴨、世田谷学園の順になっています。2日午前は明大中野、本郷、学習院、立教池袋、城北と続きます。早大学院の併願校は大学付属校が多く、3日の併願校1位は慶應中等部というのが例年の傾向です。

次に、慶應普通部で行われた面接試験の内容をご紹介しましょう。面接官から聞かれた質問で多かったのは、「受験勉強のときに辛かったことは何ですか。また受験が終わったら何をしたいですか」。また、こんな質問もありました。「科学や実験が好きだと志願書に書いてありましたがなぜだと自分では思いますか?」。志願書に書いたことを元に質問することもありますので、志願書はコピーを取っておいて、入試直前に見直しておく必要があります。変わったところでは、「ここにある星の絵に色を塗ってください。なぜその色を選んだのですか。途中で色を変えたのはなぜですか」。この場合、何を答えてもいいと思いますが、突然聞かれて黙り込んでしまうのではなく、思いついたことを小学生らしくハキハキ答えられるかどうかがポイントでしょう。

早大学院の面接試験は、受験生5人のグループ面接で、面接官は3人、質問者は1人。「なぜ本校を志望したのですか」「あなたの小学校のスローガンを教えてください」「写真を見て気がついたことや考えたことを教えてください」などの質問が出されたようです。

入試問題にも各校それぞれの特徴がありますが、ここでは麻布の社会の問題を見てみましょう。

「現代の社会では公共のもののあり方が問われています。国や地方公共団体が担うのか,民間企業にゆだねるのかに関わらず,わたしたちがどこまでを公共のものとして『みんな』で支え合うか,どこから個人の問題と考えるのかが問われているといえます。しかし,個人で抱えているようにみえる問題でも「みんな」で支えることで解決するものもあります。そのような問題を一つ挙げ,それを解決できるような「みんな」で支える仕組みを考え,100~120字で説明しなさい。」

麻布の社会は大問1問で、受験生は多くの設問を解いて、さまざまなことを考えます。ここまでに考えたことをまとめたうえで、最後にこのような自分の言葉で記述する問題に挑むことになります。お子さんが日頃から社会に対して関心を持ち、家族の間での会話を通して、いろいろな問題を考えるおく必要があります。

最後に、サピックスの卒業生で実際に3校に入学した先輩たちに、どんなオススメの授業があるのか聞いてみたので、その回答をお伝えします。

◆麻布 数学:数学の面白さを教えてくれるため
◆麻布 社会:中1社会は、世界史と世界地理が一緒になった「世界」という科目で、面白そうです。
◆慶應普通部 国語:作文を書く機会が多く、書き上げたものにクラスメイト、先生のアドバイスを聞き、推敲を繰り返す作業を経て、文章力が上がったように感じる。
◆慶應普通部 理科:実験やレポートが多く、大変な反面、力になると思うから
◆早大学院 理科:解剖や実験が多い。
◆早大学院 社会:自身で調べて深く学べます。歴史好きな友人も多く趣味が合います。

今回取り上げた3校の授業は、公立の学校や、大学受験のみを優先する学校とは明らかに違います。それぞれ、生徒の興味や関心に先生が寄り添い、数多くの気づきや学ぶ楽しさ、喜びを与えてくれる素晴らしい授業です。3校に入学して良かったという先輩たちの声が数多く届いています。
 6年生の保護者の皆様はこれから大変な季節を迎えますが、私たち塾教師は最後の1日まで、お子さんが志望校に合格できるよう、皆様と走り続ける所存です。

Copyright © 2007 WILLナビ All Rights Reserved.