第3部 入試対策セミナー
自発的学習のススメ 3校の入試対策の決め手

最後に、難関校である開成、渋幕・渋渋、武蔵に合格するためには、どのような力をつけていく必要があるのか、データを基に解説します。

各校とも中学入試は4科目ですが、科目の試験時間・配点は学校ごとに異なります。開成は算数・国語が85点、理科・社会が70点と、4教科の配点に大きな差はありません。特定の教科に偏ることなく、バランス良く学習する必要があります。渋渋は算数・国語が100点、理科・社会が50点と算・国重視の配点に。これに対して、渋幕は算数・国語が100点、理科・社会が75点、武蔵は算数・国語が100点、理科・社会が60点となっています。配点をよくご覧いただき、たとえば理科・社会が得意であれば、その配点が高い学校を受験するという考え方もあります。

次に、偏差値から見てみましょう。参考にしたのは、サピックス生が小6の9月から12月に合計4回受験した「合格力判定サピックスオープン(模試)」の結果から算出したデータです。開成の合格者分布を見ると、偏差値の高い方の合格率が高く、偏差値が下がるにつれて合格率が下がっていくことがわかります。ただ、毎年かなり高い偏差値であっても失敗する場合もあります。入試直前に体調を崩してしまった、あるいは苦手な問題がたくさん出たことが主な要因と考えられます。一方で、低い偏差値でも合格を勝ち取るお子さんもいます。模試は12月で終わりですが、開成の入試は2月です。冬休みに一気に伸びるケースが少なくないということです。

合計3回の入試を行う渋渋は、1回目と2回目よりも3回目の入試が難しくなっています。男女がほぼ同数になるように合否を判定しますので、女子に比べて男子のほうがやや入りやすくなっていますが、近年は男子の合格ラインも上がっていますので、以前ほど男女差はなくなってきました。

一方、渋幕の場合は、男女に関係なく点数で合否が決まります。結果的に男子の入学者が多いのですが、昨今は女子の人気が上がっており、優秀な成績の女子入学者も年々増えています。1月の1回目、2月の2回目とありますが、特に2回目は非常に難関です。1回目の入試で合格が得られず、2回目に再チャレンジする受験生もいますが、かなり厳しい入試となります。

武蔵は開成や渋幕・渋渋に比べると、合格者と不合格者の分布が広がり、緩やかな山なりになっています。これは、武蔵の入試問題は独特な形式で思考力・記述力を問うため、学力の高い受験生でも失敗するケースがあるためです。逆に言えば、4科の学力が若干届かなくても、「絶対に武蔵に入りたい」という気持ちでしっかり対策を行った結果、合格を勝ち取れる可能性があるということ。武蔵を志望する場合は、この独特の出題形式に慣れておく必要があるといえます。

そして、併願パターンも気になるところです。開成の入試は2月1日午前に行われます。1日の午後入試を受験する人は多くありませんが、近年、巣鴨や世田谷学園が算数1教科入試を始めており、その合否が即日発表であることから注目を集めています。1日の夜に結果がわかるので、ここで合格を手にしておくと、2日以降の精神状態に差が出ます。2日午前の併願校で最も多いのは神奈川の聖光学院ですが、近年は渋渋を選ぶ受験生も増えています。

次に2月1日午前に渋渋を受けた男子を見ると、1日午後は広尾学園、2日午前は渋渋を受けるパターンが最多です。そのほかは、渋幕、聖光学院、栄光学園、青山学院などが挙がります。女子も同じく、1日午後は広尾学園、2日午前は渋渋が多く、豊島岡女子学園、洗足学園と続きます。渋渋の発表がある3日以降は未受験が多いのですが、3日に公立の中高一貫校を併願する方が一定数います。

渋谷幕張の1月入試を受けた男子の併願校は、2月1日午前で多いのが開成、麻布、早稲田、2日午前は渋幕、3日は筑駒、早稲田となっています。女子の場合は、1日午前は桜蔭、女子学院、渋渋、2日午前は豊島岡女子学園、渋幕と続きます。実は男女ともに2月で最も多いのは未受験です。1月の渋幕に合格したら2月以降は受験しないというくらい、渋幕に魅力を感じている方が増えているということでしょう。

2月1日午前に入試を行う武蔵の受験生は、1日午後に巣鴨や東京都市大学付属、2日午前に城北、本郷、桐朋、3日午前に海城、浅野などを選んでいます。これまで併願校を見てきましたが、あくまでも一例です。ご自宅からの距離、ご家庭の教育方針などによって選び方は異なるので、納得のいく併願校選びを心がけてください。
さて、各校の入試問題にはそれぞれ特徴があるのですが、武蔵の社会の問題を取り上げてみましょう。

「平等に教育を受ける権利は憲法で保障されていますが、実際には問題文にあるように様々な格差があります。その格差の例を一つ挙げ、現在どのような対策を取られているかについて知っていることを書きなさい」

武蔵の社会の問題は、最初に長文のリード文から始まり、多くの小問でいろいろ学習したうえで、最後に記述させるという出題パターンが多く見られます。「入試問題はゼロ時間目の授業」といわれますが、武蔵の問題はまさにそうした印象があります。中学入試は知識を詰め込んで対策すればいいと誤解されることがありますが、この問題を見ると、12歳という子どもなりに様々なことを考えさせ、成長させる一つの機会にもなるということが分かるかと思います。特に難関校の受験には、付け焼き刃のような学習は役に立ちません。しっかりとした土台を作ることが何よりも重要です。

最後に、今年の卒業生の保護者の方々へのアンケート結果をご紹介します。

保護者の役割について
◆体調管理、教材ファイルの整理、子どもが前向きに過ごせるような声掛け
◆教材のどの問題をやるべきか取捨選択し、それを子どもに実行させるための精神的ケアを含めたマネジメント

志望校選びについて
◆子どもと一緒になって考えることで、第一志望校への信望度を高めることができた
◆12月に成績が低迷したが、「第一志望校に合格するんだ」という気持ちを本人が強く持っていたたことで1月を乗り切れた

どのお子さんも順風満帆ではありません。受験学年の夏休みまでは順調だったのに、そこから成績が下がってしまうこともあります。そこで大切なのが気持ちの切り替えです。「逆にここで失敗してよかった、これで次は失敗しないですむ」と捉えることができるかどうかです。

そのほか、保護者の方の役割として、「子どもが行きたい学校を尊重する」「勉強を楽しむことを最優先にした」という声がありました。この楽しむというところが非常に大事だと思います。これからの受験生活では大変なこともあると思いますが、ぜひお子さんの可能性を信じてあげてください。サピックスも全力でお手伝いさせていただきます。

Copyright © 2007 WILLナビ All Rights Reserved.