第3部 入試対策セミナー
自発的学習のススメ
3校の入試対策の決め手
先ほど3校から大変魅力的なお話を伺いましたが、入学試験は各校とも、極めて難関です。ここでは、難関突破のためのヒントになりそうなお話をさせていただきます。
入学試験は3校とも、2月1日。試験科目は開成が4教科の筆記試験。慶應義塾普通部(以下、慶應普通部)は4教科の筆記試験に加えて個人面接と体育実技。早稲田大学高等学院(以下、早大学院)中学部が4教科の筆記試験に加えてグループ面接です。
募集人員は開成が300名、高校で100名加わって合計400名になります。慶應普通部は募集が180名、それに幼稚舎からの進学が加わって240名弱。ちなみに慶應義塾高校は、外部からの募集と中等部の男子が加わり、合計約700名弱になります。早大学院は中学部が120名ですが、高校からの募集が加わると約480名になります。以上をまとめると、開成は中学の募集人員が多く、高校で若干人数が増えます。一方、慶應普通部と早大学院は、中学から入学するのは少数派で、高校で大きな間口を持っているといえます。
ちなみに、サピックスの偏差値でいえば、開成が67、慶應普通部が58、早大学院が56。ほかの塾の模擬試験よりやや低めの数字になっており、サピックスの上位2割以内で開成に、上位3割以内で慶應普通部、早大学院に合格するチャンスは十分にあります。実際、開成進学者の約6割、慶應普通部、早大学院の進学者の約5割がサピックス出身です。
次に、併願校について。開成は2月1日午後遅めに試験が終了するため、1日の午後入試に臨む受験生は約13%程度。併願先は巣鴨、東京都市大学付属、広尾学園など。開成の受験生の場合、1月校の渋谷教育学園幕張、市川、東邦大学付属東邦、栄東にすでに合格していれば、2日以降は受験しないケースも少なくありません。2日以降の併願先は、2日午前の聖光学院、渋谷教育学園渋谷、栄光学園、本郷。3日午前の筑波大学附属駒場、海城、早稲田、浅野。4日以降は受験者は極端に減り、4日午前の聖光学院、芝、慶應義塾湘南藤沢、東京都市大学付属。5日午前の成城、広尾学園、立教池袋、攻玉社になります。
慶應普通部は2月1日午後に面接・実技があるため、併願受験者は25%程度。併願先は東京都市大学付属、世田谷学園、鎌倉学園など。2日午前は慶應義塾湘南藤沢、栄光学園、青山学院、攻玉社。3日午前は慶應義塾中等部、浅野、逗子開成、暁星。4日以降は受験者が減り、2日の慶應義塾湘南藤沢の1次に合格した人は4日に2次の面接・体育実技があります。併願校は聖光学院、サレジオ学院、東京都市大学付属。慶應義塾中等部狙いの人は5日に2次の面接・体育実技あり。5日の併願先は広尾学園、逗子開成、本郷、立教池袋など。
早大学院は2月1日午後にグループ面接があり、1日午後の併願率は約16%。東京都市大学付属、世田谷学園、巣鴨が候補に。2日午前は青山学院、桐朋、立教池袋、城北。3日午前は慶應義塾中等部、早稲田、浅野、明治大学付属明治。4日午前は芝、明治大学付属中野、サレジオ学院、東京都市大学付属。5日午前は成城、広尾学園、立教池袋、攻玉社。慶應3校と異なり、早稲田の場合、早稲田、早実、早大学院ともに試験日が2月1日であるため、志望先を絞る必要があります。一方、慶應は普通部、中等部、湘南藤沢の試験日がずれているので、3校併願が可能です。
続いて、実際の入試問題を見てみましょう。
開成の算数は、解答用紙が大判の紙2枚分で、式や考え方を書くスペースが大きい。学校側もじっくり時間をかけて採点するようです。問題量は今年、かなり増えており、最終問は文字がぎっしり。これだけ文章量の多い問題は過去に例がありません。開成に限らず、難関校の算数は文章量が増える傾向にあり、問題文のルールを読んだうえでの、さまざま作業が必要です。簡単な設問から入り、最後は気づいたことをかなり論理的に詰めていかないと答えが出せません。単なるパターン学習ではなく、過去問をしっかり分析しながら、その場で考える力も養っておく必要があります。
次に慶應普通部はどうでしょう。解答用紙のスペースは大きめで、式や考え方を書きながら答えを導き出します。途中式も採点の対象になります。問題は、簡単な計算問題から始まり、いわゆるパターン問題を少しひねったものが多く、応用力が試されます。最後は展開図を扱った問題。立方体の展開図が示され、それを組み立てたものが次の4つのどれになるのか、正しいものをすべて選べというもの。「すべて」という点が悩ましく、あらゆる可能性を検討するため、時間も頭も使う問題になっています。
そして、早大学院の算数は、答えだけを書く問題から始まり、式や解き方の記述問題も一部あります。毎年、長文の問題があり、今年は多角形の組み合わせを検討し、最後に作図させるものでした。参考書の丸暗記では対応できず、過去問演習は有効なものの、応用力・思考力が試される問題といえます。
続いて国語です。慶應普通部の国語の解答用紙は、最初に漢字があり、比較的オーソドックスといえます。一方、開成の国語は記述問題ばかり。今年は比較的短い記述が多かったのですが、例年、かなり長文の答えを書かせます。早大学院は、開成ほどの量はないものの記述もあり、漢字も選択問題もあります。
開成の理科は、アリなどの昆虫の幼虫と成虫を比較し、その生態を調べる実験について考察する問題が出されました。慶應普通部の理科は、毎年独創的な問題が出されます。今年は池や沼の「掻い掘り」に関する問題で、掻い掘りして取り除くべき生物は何か、などを答えさせるものでした。さらに、不要な生物を駆除すると増える生物は何か、その生物を図に描かせる問題でした。早大学院の理科は例年オーソドックスな問題が多いのですが、今年は一風変わった問題も。総面積が同じ金属板で箱舟を作るとき、最も多くの荷物をのせられる舟は球形であることを、25字以内で説明するもの。表面積が同じ場合、球がいちばん体積が大きくなることを25字以内で書くのは、少々難しかったかもしれません。
そして社会はどうでしょう。開成は、江戸時代の人々の娯楽について出題しました。誤りの文章を1つ選ばせる問題で、近松門左衛門が歌舞伎役者ではなく作者だと気づくかどうかがポイントでした。慶應普通部の社会は、少し前まで導入が検討されていた「サマータイム」に関する問題。早大学院の社会は、罰金刑の短所を考えさせる問題。こうした時事問題・社会問題を解くには、日頃からご家族とニュースを見て、いろいろ話し合っておく必要がありそうです。
慶應普通部の面接と体育実技について。前年の面接では、「あなたの名前の由来」「福澤諭吉のすごいところは?」などの質問がありました。面接官は、答えそのものより、本人がどんなことに関心を持ち、家族とどんな会話をしているかを確認したいようです。特に慶應は一貫教育校なので、大学までの10年間を過ごす場として、慶應のことをきちんと理解しているかどうかが問われます。体育実技は運動能力を見るというより、指示に従って行動できるかどうかがポイントです。早大学院のグループ面接では、「いつもしているお手伝い」「親にほめてもらえること」「本校以外にどこを受験したか」などが聞かれます。正直に答えて構いませんが、仮に早大学院が第二志望でも、第一志望と伝えたほうがいいでしょう。
以上、駆け足の解説になってしまいましたが、本日は長時間ご清聴いただき、ありがとうございました。