次世代の子育てと教育を考えるシンポジウム

第2部 セミナー 早稲田附属・系属校 中学入試対策セミナー

SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野雅明 氏
SAPIX小学部 教育情報センター
本部長
広野 雅明 先生
 今回のシンポジウムをお聞きになって、早稲田の附属・系属校への入学を希望する気持ちも強くなったことと思います。しかし、実際に受験するとなると、3校のいずれも厳しい競争になりますので、最後に、その対策をまとめさせていただきます。
 早稲田の附属・系属校を受験する場合、まず注意すべきなのは、3校ともに入試日が2月1日だという点です。同じく人気の高い慶應の一貫教育校については、2月1日に普通部、2月2日に湘南藤沢、2月3日に中等部を受験して、「受かってから入学先を決める」ということも可能ですが、早稲田の場合は、「入学したい学校を明確にして出願」しなくてはなりません。
 それでは、どの程度の学力があれば合格できるのかを、偏差値から見てみましょう。SAPIX小学部では6年生の9月から12月まで、合格力判定サピックスオープンをいう模擬試験を毎月実施していますが、今回はその4回分、4教科の平均偏差値を、合否結果と相関づけてグラフ化いたしました。なお、SAPIXの偏差値は他塾等とは5から10ポイントの差があります。この点、ご注意ください。
 まず早稲田大学高等学院中学部では、偏差値50前後に合格者が多くなっているので、SAPIXで中間層にいれば合格する可能性は高いといえるでしょう。
 続いて、早稲田中学校。こちらは2月1日と3日の2回、入試が行われますが、1日に行われる1回目を見ると、偏差値56以上で7割が合格、56~52にいれば、「半分より合格する可能性は高い」という目安となります。進学校としての評価も高いだけに、やや高めになっています。
 とはいえ、実際には偏差値48以下でも合格している生徒もいます。なぜなら中学受験においては、最後になって学力が伸びるお子さんが存在するからです。なかには、最後の模擬試験が終わるころから本気を出して、冬休みに一気に伸びる生徒もいます。ただ、それを期待して勉強しないままでいるのは論外です。一方で、直前にスランプに陥る、試験当日に体調を崩すなど、実力を発揮することができずに終わってしまう生徒も少なからずいます。
 3日にも入試がある早稲田ですが、1日に同校を受験する受験生の多くが、2回目も出願します。また、1日に開成や駒場東邦に出願した生徒のなかにも併願先として3日の入試に出願する人もいます。とはいえ、1日の入試で合格を得た受験生がそこで抜けることを考えると、早稲田の2回目は数字ほどの激戦にはなりません。しかし偏差値で見ると、半数以上が合格できるラインは56以上、1回目に比べると5ポイントずつ上にスライドしています。やはり、早稲田に入学したいのであれば、「1回目の入試で決めておくべき」と言えそうです。
 早稲田実業学校中等部は、男女別で見てみましょう。男子は偏差値48でも半分弱の合格者が出ています。先の2校に比べると、「若干入りやすいかな」という印象です。ところが女子は、偏差値52でも多くの生徒が不合格。男女で別世界なのが早実の特徴です。女子にとっては、首都圏のなかで唯一受験できる早稲田の系属校であり、しかも募集定員40名と少ないため、どうしても狭き門になってしまうのです。
 もっとも、このような数値を示されて「うちの子の成績ではとうてい無理だ」と諦める必要はありません。合格者の最小偏差値を見ると、4教科の平均は、早大学院43、早稲田(1回)43、早稲田(2回)46、早実(男)47、早実(女)50です。早実の女子はやはり厳しいですが、ほかは偏差値50を切っていても可能性があります。さらに教科別で見れば40以下の偏差値もあるので、苦手科目を克服し切れなくとも、他の3教科でカバーできるのであれば十分可能性はあります。
 併願パターンについても少し触れましょう。早大学院の1日午後入試の受験率は約8%で、東京都市大学付属や國學院大學久我山を併願しています。2日は学習院、立教池袋、明治大学付属明治などの大学附属、3日も慶應義塾中等部や早稲田と、附属・系属校が並んでいます。
 早稲田は1日午後の受験率が約24%。同じく東京都市大付属、國學院久我山の順です。2日は本郷、渋谷教育学園幕張、城北などの進学校が、3日は早稲田(2回)のほか、慶應中等部、浅野などの名前が挙がっています。
 早実の男子は、1日午後の受験率は約35%で、出願先は先の2校とほぼ同じです。2日は明大明治、桐朋、城北、3日は慶應中等部、早稲田(2回)、明大明治(2回)となっています。一方の女子は、1日午後の受験率は約26%で、広尾学園など。2日には青山学院、明大明治、慶應湘南藤沢、豊島岡女子学園、3日は慶應中等部、明大明治(2回)となっています。
SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野雅明 氏
 最後に、入試問題について紹介したいと思います。本日は日本経済新聞社主催のフォーラムで、お父様の参加者が多いということに加え、さきほど早大学院の本杉先生から「大人との対話」というキーワードも頂きましたので、親子で話し合える社会科の問題を取り上げてみたいと思います。
 早稲田(1回)では、国民の祝日に関連して、「20歳以上でないとできないこと」を、「結婚」「選挙権の行使」「国民年金の加入」「自動車運転免許」の取得の四つから選ばせる問題が出ました。保護者の方にとっては常識ですが、子どもたちは苦手な内容です。ほかにも、「テレビのカラー放送」「日本人のノーベル平和賞受賞」「大阪万博」「東名高速道路開通」のなかから「1964年以前の出来事」を一つ選ぶ問題も。同様に、〝少し前の歴史〟という問題では、早大学院でも「サザエさんの作者」に関する問題が出されており、親世代の記憶や経験を知っているかどうかを確認しようという意図がくみ取れます。ほかにも早大学院では「参議院選挙における比例代表制の問題点」、早実では「イギリスのEU離脱の立場をとる人の理由」など、時事問題も必ず出題されています。ニュースや新聞に取り上げられる内容について、親子で会話をする習慣を日ごろからつけておきたいものです。