
早稲田実業学校 学校長
早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授
早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授
藁谷 友紀 先生
続いては、このタイミングで紹介するのは“あざとい”かなとも思ったのですが(笑)、プロ野球志望表明で話題の清宮幸太郎君です。彼は勉強も頑張っており、現在、組長(クラス委員長)を務めております。主将としてチームを牽引する一方で、クラスをまとめる役割も果たす。これも文武両道の一つの形だと思います。
この2人は傑出した存在ではありますが、本校の生徒たちは、一人ひとりが文武両道を実現しようと日々励んでいます。本校の掲げる文武両道は、「個々の生徒がそれぞれ、勉強と活動を両立させる」ことであり、勉強のできる生徒が「文」を、運動能力の優れた生徒が「武」を究めることではないのです。
本校の教育方針は「豊かな個性と高い学力をもち、困難に打ち克つたくましい精神力を兼ね備えた人物」を育成することです。そのためには「中学生だから、高校生だから」という上限は必要なく、やりたいことを思う存分追求する場を与えることが重要だと考えています。もちろん、社会に貢献するための基本となる深い教養も不可欠です。その実現のために、校訓「三敬主義(他を敬し、己を敬し、事物を敬す)」と、校是「去華就実(上辺の華やかなものを去り、実に就く)」を掲げています。そしてこれらを実践することが、早稲田大学の教旨「学問の独立を全うし 学問の活用を効し 模範国民を造就する」に近づくための教育だと考えているのです。
本校の設立は1901年。100周年となる2001年には現地・国分寺にキャンパスを移転、翌2002年には初等部を開校し、中等部・高等部も男女共学化を実現しました。「早実第二世紀」に当たり心掛けたのは〝地域に根ざす教育〟でした。社会貢献の第一歩につながる地域社会に目を向ける取り組みは、この15年でかなり成果を出すことができたと自負しています。

早稲田大学が表明しているグローバル教育の強化にも対応しています。英語教育では、基礎力の向上を図るだけでなく、英語での発信力を養うため、理科など他教科を英語で学ぶ取り組みを今年度から試験的に開始しました。また、国際社会で活躍する際に必要となる日本人としてのアイデンティティーを育むために、茶道や日本舞踊などの伝統文化に触れる機会も設けています。海外からのギャップイヤー生の受け入れや、アメリカ、イギリス、カナダなどへの語学研修など、国際交流の機会は国内外ともに充実しており、さらに今年度からは、イギリスの名門パブリックスクールであるラグビー校への2年間の留学制度(中3夏から高2夏まで)も新設しました。高等部では年間留学をしても、3年間で卒業できる制度も導入したので、積極的に海外で学んでほしいと思っています。
そうして得た知識をぜひ、世界に向けて知らしめる人、社会のために役立てる人になってもらいたい。「社会の一隅を照らす」ことこそが、社会の質を高めることに通じるからです。