未来のグローバルリーダーに
求められる力とは?


~子どもたちに贈る「人生のマネジメント」のススメ~
 グローバリゼーションの進展によって子どもたちが生きていく社会の概念がこれまでとは違った広がりを持つようになりました。これに伴い、国際感覚や多様な価値観への寛容さ、あるいは語学の技術だけでは通用しない根本的なコミュニケーション力の重要性を指摘する声も高まっています。次代を担う子どもたちはこの先どのような力をいかにして身につけていったらよいのでしょうか。教育関係の著書が多数あり、アメリカのボーディングスクールにも詳しい開成中学校・高等学校校長の柳沢幸雄先生と、SAPIX YOZEMI GROUP共同代表の髙宮敏郎氏に話し合ってもらいました。

中高で親元を離れ
集団の中で生きることで
自立心が育まれる

髙宮 SAPIX YOZEMI GROUPでは、米国のボーディングスクール(※下記注釈参照)への進学をサポートする事業を行っています。ボーディングスクールのフェアには小学校4、5年生の保護者の方が多く集まりますが、開成のようなトップ校をめざすご家庭では、早くからボーディングスクールを視野に入れている方も少なくないと思います。
 米国のボーディングスクールはもともとハーバードのような社会的リーダーを育成する大学に入るための学校で、一般的にはキャンパス内で寮生活を送りながらリベラルアーツ教育を行うところに特徴があります。開成にもボーディングスクールに留学する生徒さんがいると伺いましたが、柳沢先生はボーディングスクールの良さについてどのようにお考えですか。

柳沢 今の時代は、たとえば江戸時代の寺子屋のように、教師のところに出かけて教えを請わなくても、インターネットでいくらでも知識が得られます。では、なぜ学校に行くのか。それは人間が集団的な生き物だからです。集団の中でどう生きていくか、そのトレーニングをすることは、中等教育の段階では非常に重要です。その意味で役に立つのがボーディングスクールではないでしょうか。ボーディングスクールでは、中学3年生ぐらいの年齢から入って寮生活を始めるところが多いのですが、これは非常にうまくできているシステムだと思います。

髙宮 その時期が親離れ、子離れの時期だからですね。

柳沢 そうです。本校の生徒たちを見ていても、入学したての中学1年生は本当に子どもです。でも、2年生になると急に大きくなりますから、3年生ぐらいの時期に寮生活を始めるのは、自立心を育むうえで良いことだと思います。


※ボーディングスクール(Boarding School)とは、欧米の寄宿制中等教育学校のこと。特に米国では、名門大学進学のための教育を目的とした寮制の私立学校を指す。多くのボーディングスクールは全人教育を理念に掲げ、徹底した少人数制のもと、学業のみならず総合的な人間力の育成をめざしている。



リベラルアーツの目的は
広く学ぶことではなく
多様性の中で学び続けること

柳沢 ボーディングスクールはまた、リベラルアーツ教育を行うところに大きな特徴があります。リベラルアーツというと、日本では教養主義といって書斎にこもって学ぶもののように考えますが、そうではありません。リベラルアーツでは、どうやって人と接するか、そのためにはどういう言葉遣いをしたらよいのかといったことまでを含めて学びます。これは非常に重要なことです。いろいろな学問領域を勉強したから教養が身についた、ということではないのです。  
 大切なのは人間関係です。誰しも得意、不得意がありますから、修める学問は広くなくてもよいのです。ただ最終的に、集団の中できちんと考えを伝えていけるように人間関係をつくりつつ、学問に関しては自分の得意分野を伸ばしていかなくてはなりません。その人間関係をつくるときに、一番重要になるのは言語です。一対一なら目を見てわかるということもあるでしょうが、多人数の集団では言語によるコミュニケーションがしっかりできなくてはなりません。

髙宮 米国のボーディングスクールはディスカッションをベースにした授業を行い、言語による表現力の育成を重視しています。そして、生徒たちは授業だけでなく、芸術やスポーツ、ボランティア活動などにも積極的に取り組んでいます。そこに米国流リーダー教育のポイントがあると思っています。