一度自分で選択したら
その道で早く順応して
新しい挑戦を

高宮 最後に、中学受験を控えたお子さんを持つ保護者の方にアドバイスをお願いします。

柳沢 中学受験は〝競争試験〟です。受かる人もいれば、そうでない人もいる。確かに、合格できなければつらい思いをします。でも、競争試験がない社会は本当に望ましい在り方なのでしょうか。士農工商といわれたように社会の階級が固定していた時代には、競争はほとんどありませんでした。逆に言えば、競争があるからこそ、自分で将来の道を選択できるということです。選択する自由がある社会に、私たちは生きているのです。試験は残念な結果に終わるかもしれない。でも、それで人生のすべてが決まるわけではありません。失敗したら、次の場でチャレンジすればいいのです。自由な社会で生きていくのであれば、それは必然的なことです。
 中学で入学した生徒たちを見ていると、その場に早くなじんだ子ほど、きちんと成果を挙げています。入学試験の後は新しい世界が広がります。そこに早くなじむことが、次のステップで大きくはばたく原動力となります。小学校時代の集大成として第一志望に向けて頑張ることは大事なことですが、結果がどう転んでも、それを受け入れて、しっかりと前を向いて次のステップに進んでいただきたいと思います。

高宮 これからの時代を生きる皆さんの前には、将来の選択肢がいっぱい用意されています。常にチャレンジ精神を忘れず、自分の可能性を見つけていくことが大事ですね。本日は、ありがとうございました。

開成中学校・高等学校 校長

柳沢 幸雄

東京大学名誉教授、開成中学校・高等学校校長。1947年生まれ。開成中・高、東京大学工学部を卒業。企業勤務、東京大学大学院博士課程を経て、ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授(在任中ベストティーチャーに選出)、東京大学大学院環境システム学専攻教授を歴任。2011年より現職。『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)など、教育関係の著書多数。

SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表 (代々木ゼミナール副理事長)

髙宮 敏郎

1974年生まれ。1997年慶應義塾大学経済学部卒業後、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。2000年、学校法人髙宮学園入職。米国ペンシルベニア大学にて大学経営学を学び、2005年に教育学博士号を取得。2009年より現職。