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連載コラム

教科別の出題傾向(算数編 (07/12/05)
問題文の意味を正確に読み取り、
論理的に展開する緻密な思考力が要求される
 私立中学の算数入試問題は、難関校と中堅校で出題傾向が大幅に異なります。第一志望校と併願校では別の対策が求められるわけで、注意が必要です。

 中堅校は、参考書・問題集でよく扱われているような問題が中心です。おそらく中学受験生なら、誰でも1回は解いたことがあるタイプの問題であり、その解法にどれだけ習熟しているかがカギを握ります。ですから、直前期は、頻出問題を数多く解く学習法が有効になります。問題文を読めば、条件反射的に解法が頭に思い描け、手がすぐに動くぐらいに「超習熟」しておくことが大切です。

 一方、難関校では、そうしたパターン的な出題はほとんどありません。ただし、ひねった問題というより、逆に非常に素直な問題ともいえます。問題文の意味を読み取り、丁寧に作業していけば解ける問題だからです。問題文を読んで、その背後のイメージ、意味していることを把握し、それを数式に置き換える能力を身につけることが重要です。

 とはいえ、それが簡単なことではありません。難関校では、1問に複数の分野の要素を絡ませた「融合問題」が数多く見られます。問題文を見た瞬間は、パターンで解けそうに思えるのに、実際はそうではないといったタイプの問題なのです。ですから、中堅校とは違い、パターンにすぐ当てはめようとしないで、一度踏みとどまって、じっくり問題文を読み返し、きちんと意味を把握することが肝心です。ある意味では、算数でありながら、国語力が問われているようなところもあります。開成中学などは、問題文が短めになっていますが、文章が簡略化されているために、誤解を生みやすい表現でもあるのです。

 問題文の意味を読み取った後は、粘り強く考え、計算していけばいいわけですが、そこにも落とし穴があります。焦ったり、緊張したりすると、自信のない子どもは、いくつかの条件を見落としたりなど、意外に単純なミスを起こしやすいものです。論理的に考える緻密な思考力が要求されているといっていいでしょう。

 ミスを防ぐためには、計算力を高めておくことも重要なポイントになります。1問を解くのに相当な時間がかかるため、最後に計算ミスがないかを見直す時間が取れないのが実情だからです。

 もっとも、ほとんどの中学では途中式、つまり解答までのプロセスをきちんと評価してくれます。計算ミスはしないにこしたことはありませんが、それ以上に、解法のプロセスの方が重視されていることは間違いありません。

 なお、参考までに、下に主な中学の過去3年間の出題分野をまとめておきました。中学ごとによく出される分野は存在しますから、直前期の学習に役立ててほしいと思います。


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■森上展安氏
●プロフィール
株式会社森上教育研究所 代表取締役。1998年「森上教育研究所」を設立、私立中学入試状況の分析と情報提供を中心に、幅広く教育評論活動を行っている。
http://www.morigami.co.jp/