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連載コラム

2007年度の首都圏中学入試を総括する<PART 2> (07/10/21)
「大学進学実績」「リニューアル」「理系教育の重視」が人気要素に
 2007年度入試で大幅に人気がアップした中学を見てみると、いくつかの特色が感じられる。「大学進学実績」「リニューアル」「理系教育の重視」が人気の3要素になっている観があるのだ。

 大学進学実績については、多くの中学が意識しており、特進コースや、時には東大コースなどを設けて、難関大学合格に向けた指導を強化している。それが功を奏して、合格実績が伸びれば、確実に志願者増加に結びつく。

 リニューアルとは、教育内容・システムの改革、施設・設備の拡充などのこと。教育システムに関しては、近年、男子校、女子校の共学化が進行しており、人気を集めている。たとえば、2006年度に、かえつ有明中学校は湾岸部に新校舎を作り、共学になったところ、志願者は3倍に増えた。2007年度も、宝仙学園中学校が新校舎に共学部を開校し、人気になった。また、2001年度の早稲田実業学校を皮切りに、2007年度の法政大学第一中学校、2008年度の明治大学付属明治中学校など、ブランド大学の付属男子校が共学化を図るケースも目立っている。もともと人気の高い中学だけに、女子受験生も取り込んで、さらに難化すると考えられる。教育内容や施設・設備についても、伝統に甘んじることなく、常に改革の努力を続けている中学が、やはり高い評価を得ているようだ。

 理系教育の重視は、ここ数年、新たに見られるようになった傾向だ。とくに女子受験生にその意識が強い。男女雇用機会均等法が定着したとはいえ、まだまだ企業の多くは男性社会であり、女性は補助的な業務を担うことが少なくない。けれども、難関私立中学を狙うような女子受験生は、それでは満足できない。男性と対等な立場で、第一線で活躍したいという意識が強い。そして、そのためには、資格を取得していれば、比較的性別に関係なく働けるチャンスが多い理系の職種をめざそうという考え方が生まれるわけだ。近年は、とくに医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、理学療法士など、医療関連の資格が取得できる学部への進出が急増している。

 その点を意識して、かつては文系中心のカリキュラムを編成していた女子校も変貌を遂げつつある。たとえば鴎友学園女子中学校では、中学入学時に全員が白衣を購入し、理科の授業に臨む。授業は実験中心で、解剖、ラジオ製作などを行う。中1の期末テストでは筆記試験はなく、実験実技が課されるというから徹底している。白梅学園静修中学校は、高校2年まで文理のコース分けをせず、いわゆる国公立大学理系志望者向けのカリキュラムを編成。理科は物理・化学・生物の3科目必修で、大学や研究機関と連携して、実験や体験学習も豊富に設けられている。

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■森上展安氏
●プロフィール
株式会社森上教育研究所 代表取締役。1998年「森上教育研究所」を設立、私立中学入試状況の分析と情報提供を中心に、幅広く教育評論活動を行っている。
http://www.morigami.co.jp/