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連載コラム

2007年度の首都圏中学入試を総括する<PART 1> (07/10/1)
総難化状況の中、併願ターゲットとして
見直してほしい午後入試
 新聞や一般週刊誌でも盛んに特集が組まれるほど、私立中学入試の加熱ぶりが注目を集めている。2007年度は、首都圏で初めて中学受験者数が5万人を突破。小学生の6人に1人が中学受験にチャレンジしている。
 四谷大塚の80%合格基準偏差値(以下、偏差値と記載)別の入試倍率を見ると、主要校の大半が4倍台の高い倍率を記録<下図参照>。とくに男子は、偏差値60以上の難関校を受験した者が昨年度より500 人も増加した。加えて、早稲田、慶應、青山、明治、立教など、ブランド大学の付属校もこぞって倍率をアップさせた。しかも、これらの難関校の多くは、合格者を絞り込む傾向を見せている。志願状況が好調な今のうちに「水増し入学」をできるだけ少なくし、生徒のレベルアップを図ろうという考えによるものと思われる。志願者が増えた上に、合格者が絞り込まれれば、倍率がアップするのも当然のことで、難関校に合格するためには、相当な学力が要求されるようになっているのだ。
 それだけに、今後の中学受験者は、より慎重な出願作戦をとることが必要になる。けれども、実はそれが容易なことではない。下図から分かるように、昨年度までほぼ全入状況にあった偏差値30台の中学の倍率が2倍状況になっているし、また、女子は倍率2倍だった偏差値40台の中学が3倍へ、男子も偏差値40台そこそこまで3倍域が拡大している。この結果、延べ受験生に占める比率では、男子の98%、女子の97%が3倍以上の入試状況になったことが明らかになった。つまり、私立中学は総難化の情勢にあるわけで、併願校を慎重に選ばなければ、全滅の危険もあるといえよう。
 首都圏の中学入試の場合、2月1日に主要校の試験日が集中するため、その本命入試の前に合格校を確保することがポイントになる。ターゲットとなるのは、1月中に入試が行われる埼玉、千葉、茨城など、郊外の私立中学だ。だが、近年は、これらの郊外の私立中学の人気が高まり、なかなか合格しにくくなっている。2007年度も、東京、神奈川の私立中学の受験者数が約5%の増加だったのに対して、埼玉、千葉、茨城の私立中学の受験者数は8%近くも増加している。
 そこで、併願ターゲットとして見直す価値が高いと、私が考えているのが午後入試だ。年々、実施校が増え、受験者数も増加しているが、歩留り(入学率)が低めなことから、定員の4〜5倍の合格者を発表するケースが少なくない。国語・算数の2教科型入試が大半なので、受験勉強のスタートが遅れて、理科・社会まで手が回らなかった受験生にとってもチャンスが生まれる。併願の選択肢の1つとして、考慮してみるといいだろう。

'07年度入試・難度別にみた倍率と受験者数
男子チャート
女子チャート
■森上展安氏
●プロフィール
株式会社森上教育研究所 代表取締役。1998年「森上教育研究所」を設立、私立中学入試状況の分析と情報提供を中心に、幅広く教育評論活動を行っている。
http://www.morigami.co.jp/