森上先生注目!高校特集

森上先生からのメッセージ

頑張れ!! 高校受験生

 実りの秋を迎え、中学3年生の皆さんにとっては、志望校を決定する時期が近づいてきました。
 すでに、夏休みの間に、学校フェアや学校説明会などに参加した人も多いと思いますが、秋以降にもそうした場は数多く設けられています。ぜひ積極的に出かけて、自分にあった学校を探すようにしましょう。
 いま高校は、公立、私立を問わず、大きな転換期にあります。そこで、「高校入試の現状」と「受験校選びのポイント」について紹介しますので参考にしてください。

高校入試・教育システムの現状
都立進学指導重点校等、5年ぶりに自校作成問題復活

 進学指導重点校(日比谷・戸山・青山・西・八王子東・立川・国立)と進学重視型単位制校(新宿・墨田川・国分寺)は、グループ作成問題から自校作成問題に戻ります。グループ共通の問題にすることで、受検生が各グループ内の高校を選択しやすくするなどの目的で2014年から3年間実施されていました。しかしながら前述の学校では差し替え問題が多く、また受検生も学校の特色等を調べた上で志望校を決めています。必ずしもグループ共通の問題だからという理由でグループ内の学校の志望校変更をすることもないことから、自校作成方式に戻ります。
 なお併設型高校(白鷗・両国・富士・大泉・武蔵)は中高一貫教育校という共通性を持つことから問題の差し替えを行っている学校はないことなどから、これまで通りグループ作成問題が採用されます。
 問題の傾向は極端に大きく変わらないと予想されますので、グループ作成問題を含めて、過去問にふれておきましょう。
 埼玉県の公立高校入試は、昨年度入試より、理科と社会の学力検査が10分延長されました。また英語と数学において、学校選択問題が県立浦和や浦和第一女子、大宮など20校で実施されました。2018年度入試においても学校選択問題を実施する学校は昨年と変わりません。

国の就学支援金制度について

 2014年4月入学者より適用された国の「就学支援制度」では、公立高校の授業料は無償化(※1)となりますが、ほとんどの私立高校で全額を賄うことはできません。一般的に私立高校は公立高校に比べ授業料が高く、生徒自身の志望にかかわらず、経済的な理由で私立高校を選択できないケースもあります。これを補うため、各自治体による授業料軽減策が実施されています。
 

◆公立高校 学校教育費 各費目の平均額(参考値)
授業料 入学金 施設費等 その他 初年度納付金総額
2014年度 118,800円 5,650円 48,831円 71,691円 244,972円

出展:都立学校教育部高等学校教育課経理担当(授業料・入学金)、文部科学省「子供の学習費調査」(施設費・その他)

※1)国の就学支援金:世帯年収910万円未満の世帯に対して、公立高校の授業料に相当する118,000~297,000円を支給


東京と埼玉の私立高校で「実質授業料無償化」制度が拡充

 2017年4月入学生より東京都と埼玉県で、「授業料の実質無償化」対象世帯を拡充されました。この制度がどのような内容で、どのような条件で支給されるのか、東京都を例に確認していきましょう。
 これまでの「私立高校等授業料軽減助成金」制度は、これまで世帯収入に応じて段階的に支給していました。それが今年度から年収760万円未満(埼玉県:年収約609万円未満)の世帯を対象に一定の条件のもと、442,000円(埼玉県:授業料補助375,000円、入学金補助100,000円)支給されるようになります。この442,000円が前年度の都内私立高校の平均授業料に相当する金額で、授業料が実質的に無償となることからこのように呼ばれています。
 ただし支給額の上限は、授業料が442,000円を超える場合は442,000円、それを下回る場合はその授業料が上限となります。


◆東京都の私立高校 初年度納付金 各費目の平均額
授業料 入学金 施設費等 その他 初年度納付金総額
2017年度 448,862円 250,026円 45,822円 167,447円 912,156円
2016年度 441,547円 250,767円 47,252円 164,884円 904,449円

出展:東京都生活文化局


◆公立高校 学校教育費 各費目の平均額(参考値)
授業料 入学金 施設費等 その他 初年度納付金総額
2017年度 373,142円 238,625円 186,160円 19,517円 817,444円

 東京の私立高校で平成29年度の授業料が442,000円を上回る学校は72校81科・コースあります。これを上回る金額については自己負担になります。また施設費やその他費用等については支給範囲に含まれないため、授業料との差額が施設費等に充当されません。
 このように授業料の全額ではないものの、都立と私立の費用差が少なくなります。これにより経済的な理由だけではなく、私立の特色ある教育に注目して学校を選ぶ選択の幅が広がったといえます。



助成対象者について

 助成を受けるための条件は各都県によって異なります。
 東京都の場合、「都内在住で私立高校(※2)に通う子どもを持つ、世帯年収760万円未満の家庭」となります。ただし世帯年収の判断基準は世帯区分や人数、保護者の市町村民税所得割額によって決められます。そのため保護者が父母であった場合、二人の年収が760万円未満であれば必ず支給されるわけではありません。なお生徒と保護者が都内在住であれば、東京以外の近隣県の私立高校に通学する場合も対象となります。
 埼玉県の助成基準および詳細については、次表「各都県の助成基準」を確認してください。 ※2)私立高校…全日制・定時制高校、中高一貫校の後期課程、特別支援学校の高等部、高等専門学校(1~3年)、専修学校高等課程



 これらの制度により、中下位所得者層は経済的な理由だけで公立高校を選ぶ必要はなくなり、より幅広い学校選択が可能になっています。これを受けて、面倒見の良さや柔軟な教育等が行われている私立校の人気も高まってきています。


受験校選びのポイント
留学制度の充実度など、教育システムの特色をよく調べよう

 高校入試は内申点と偏差値によって、ある程度自分の合格圏が見えてしまう入試です。中学入試や大学入試のような"一発逆転"の可能性は低いといえるかもしれません。だからといって「自分が合格できるのは、この高校だけだから」と、早めにあきらめて、選択肢を狭めてしまう必要はありません。むしろ合格可能な中で、どの高校を選ぶのか、とても重要なポイントになるのです。
 近年、とくに私立高校では多様な教育改革が進行しています。インターネットなどで情報を集めるとともに、学校説明会や体験入学などにも積極的に参加して、バラエティーに富んだ私立高校の教育システムをしっかりチェックした上で、受験校を選ぶようにしましょう。なお、男子校や女子校の共学化や校舎施設・制服のリニューアル、推薦基準の変更などにより、人気が大きく変動することがあります。


 2014年春よりスーパーグローバルハイスクール事業がスタートしました。国が進める「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」において、『グローバル化に対応した教育を行い、高校段階から世界と戦えるグローバル・リーダーを育てる』ため、文部科学省によって進められています。
 環境や資源、伝染病といった問題には、国境を越えた世界規模での取組みが必要となります。これらの問題は日本だけで解決できるものではなく、関係する他国と広い分野で協働していく必要があります。
 スーパーグローバルハイスクール(以下SGH)指定校では、「社会課題に対する関心と深い教養」「コミュニケーション能力」「問題解決力」を身につけることを目標にしています。グローバルに活躍するため英語の活用能力を高めることは重要ですが、単に英語力を向上させるだけでなく、課題研究を柱に据えた探求型学習などを通して3つの力を身につけることにつなげます。
 私がとくに注目してほしいと考えているのが、グローバル時代に対応した教育がどの程度充実しているかです。これからの社会を生きる皆さんは、海外の人々と協力して物事を進める姿勢が求められます。「使える英語」教育や、海外体験のチャンスが豊富な高校に進学すれば、それを可能にする能力が高められるはずです。東京都では、留学する生徒に支援金を支給するなど、バックアップ体制を強化しており、ぜひ若い時期に異文化を体感する機会を持ってほしいと思います。

全体的な学力を高めるとともに、過去問を活用した学習にも力を入れよう

 秋からの学習では、全体的な学力を向上させるとともに、そろそろ受験する高校の過去問にも目を通して、出題傾向・形式に沿った対策学習を進める必要があります。
 とくに重視してほしいのが英語です。それも「読む」「書く」能力だけでなく、「話す」「聞く」能力を意識的に高めるようにしましょう。首都圏の公立高校入試では、英語で必ずヒヤリングが課されるからです。
 ヒアリング力を高めるために、お勧めしたいのがNHKの『基礎英語』です。高校3年生まで継続して取り組んでいけば、どんな難関大学入試の英語でもクリアできるといわれるほど評価が高いのです。中学入学当初は利用していた人が多いと思いますが、その後、やめてしまったケースもあるでしょう。これからでもいいので、入試本番まで継続して聞くようにすれば、必ず大きな力になります。