安田教育研究所 代表安田 理氏
2017年度入試の最大の特徴と言えば入試の多様化です。2016年度入試でも、英語入試、思考力テスト、ポテンシャル、リベラルアーツ、一能一芸、志、自己決定……名称からは中身が分からない入試が急増しました。英語入試は文字通り進学塾には通っていないが、英会話教室や英語塾に通っていた児童に中学受験を意識してもらうことを意図したものであり、そのほかも「わが校は進学塾に通っていなくても受験できますよ」という意思表示です。リーマンショック以降、進学塾に通わせる層が減少して受験人口が減っていたことを克服しようとする私立各校の工夫の現れと言っていいでしょう。
2017年度入試では多様化が、大学入試改革でキーワードになっている用語、「論理的思考力&発想力入試」「日本語表現力入試、英語表現力入試」「プレゼンテーション入試」「総合学力評価テスト」といった名称が付けられている点が大きな特徴です。背景には、保護者の大学入試改革への強い関心があり、それへの対応を進学先である私立中高一貫校に求めているからといえるでしょう。こうした名称の入試を新設することは、「わが校は大学入試改革をちゃんと意識していますよ」というわかりやすいメッセージなのです。
また、従来型の学習してきた知識の理解度を確認するものでなく、知識を活用する力や、その場で考える力、考えたことを表現する力を見ようとしています。さらには、小学校時代に各種競技会・コンテスト・資格試験などで努?し続けたことを面接で見ようとする入試もあります。
このように、2科・4科以外の入試形態が目下急増しているのです。
新しいタイプの入試は新聞や受験情報誌でも盛んに取り上げられ、また名称にインパクトがあるので、いま塾でやっている勉強で大丈夫なのかと動揺している保護者がいます。が、こうした入試を採用している学校でも募集定員の多くは2科・4科で取っていますので、これまでの勉強で受けられなくなるわけではありません。
塾に通っていれば、それが活かせる入試を選べばいいのです。むしろこれまで塾に通っていなかった。お稽古事をしていて受験を意識していなかった。そうした児童こそ新しいタイプにチャレンジすればいいでしょう。
今回の入試の多様化は、より多くの人に中学受験の機会が広がったと捉えればいいと思います。