中学受験と子育てを考えるフォーラム

SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野雅明氏

広野 雅明 氏
SAPIX小学部 教育情報センター
本部長
広野 雅明 氏

 開成、灘には素晴らしい教育環境がありますが、そこに入るにはまず入試を突破しなければなりません。まず、灘中学校の入試の特徴は、初日に算・国・理の3教科の筆記試験が行われ、翌日にまた算・国の筆記試験があり、社会科がないことです。合計500点満点ですが、2010年から2014年までの入試結果を見ると、合格者の最低点は304~362点(約6割)で、年によって若干上がることもあります。そういう年は、たいてい算数の平均点が少し高くなっています。各教科の配点と合格者の平均点、受験者の平均点を見比べると、1題あたりの配点が高い算数で大きく差がついていることがわかります。ただし、男子の場合は女子に比べて国語力が低いお子さんもいるので、国語の勉強もとても大事です。

 これに対し開成中学校の入試は、首都圏の多くの中学校と同様に、国・算・理・社の4教科。主な男子校のなかでは理・社の配点が算・国の各85点に対して各70点と比較的高く、問題自体は易しいわけではないのに、合格者の理・社の平均点が高いのが特徴です。そのため、理・社の点数を安定的に取ることが大切です。また、灘と同じく算数で差がつく傾向があります。国語も記述問題が多くなってから差がつきやすくなりました。

 具体的に入試問題を見ていくと、灘の1日目の算数は大問が6題あり、小問が11問から13問くらい出題されています。このように問題数が多く、答えだけを求める形式の出題は首都圏の男子校ではあまり見られません。首都圏の受験生が灘の入試に臨む場合は、この1日目の算数の過去問をしっかりやっておかないと戸惑うでしょう。一方、2日目の算数は、首都圏の男子校でもよく出る比較的長めの文章題で、解き方や式を書きながら答えを求める出題となっています。

 開成の算数は60分で大問が3~4題。灘と同様に、年によって平均点の差もかなりあり、難しい年は終わった瞬間に泣き出す受験生もいるほどです。また、数年ごとに、解き方ではなく、「なぜそうなるのか」という理由を書かせる問題も出ます。こうした問題は、自分の頭に描いていることを言葉で表さなければならないので、算数の問題ではありますが記述力が問われます。他校ではこうした論理の問題は出ないので、受験生は非常に苦労するところです。

 次に国語の試験ですが、灘の1日目には、言葉の知識を問う問題や、灘の特徴である漢字パズルのような問題がよく出ます。単なる知識だけでなく、それをいかに応用できるか、語彙力についても高度なものが問われます。首都圏の男子校ではあまりないタイプの問題なので、算数と同様、過去問をやっておかないとなかなか点数が取れないでしょう。2日目は、長文を読ませたうえで解答を書かせる記述問題が中心となっています。

 一方、開成の国語は、年によって大問が1~3題。漢字は基本的に毎年出ますが、大問のなかに含まれます。たとえば、2010年度は物語文、論説文、知識問題の3題でしたが、2013年度は物語文の1題のみ。2014年度は随筆文、詩、知識問題というように、かつて出たことのない随筆文があり、そのうえ開成には珍しく詩が出題されました。知識問題の例として、片仮名や平仮名の書き順を問う問題もよく出ます。

灘中学校・高等学校校舎

 サピックスでは6年生の後期に「合格力判定サピックスオープン」という模試を4回実施しています。その合格可能性と合否の関係を見てみると、開成の場合は70以上で合格率100%、64なら80%を超えます。60~62なら合否の確率は50%、それを切ると合格可能性は急速に下がりますが、54で合格しているケースもあります。しかし、これは6年生の秋の数値なので、4年生くらいにさかのぼると、合格可能性が50を切るお子さんでも開成に合格しているケースは少なくないので、最後まで諦めず挑戦を続けることが大切です。

 灘の場合はサピックスからの合格者は多くありませんが、合格可能性が72以上で100%、68で70%程度、60~64なら50%といったところです。合格可能性65が一つの目安といえます。

 中学受験は、さまざまな状況を考慮して、1月校、難関校、中堅校、午後入試を行う学校などを組み合わせながら、5~7校に出願し、実際に3~5校を受験するのが平均です。そして、いつくか合格したなかから最もお子さんに会う学校に決めていただく形がよいと思います。