TOPIC-4

自分の言葉を手に入れ慶應義塾大学法学部へ

法学部政治学科をめざした理由は何でしょうか。

トラウデン 社会や政治の動きに興味があったからです。私の家では、夜の7時のニュースは必ず家族全員で見ることになっていました。父と母は自分たちの会話は英語で、子どもたちと話すときは日本語を使っていましたが、ニュースで取り上げられる社会的なテーマについて、いつも父と母が英語で議論しているのを横で聞いていました。英語ですから内容はあまり詳しくはわからなかったのですが、こうしたニュースに関心の高い家庭環境が影響したのは間違いないと思います。

なぜ慶應義塾大学を選んだのですか。

トラウデン 祖父の母校ということもありますが、父の母語であるドイツ語の教育が慶應の法学部はとくに充実しており、キャンパスの雰囲気が高校と似ていることもあって、総合的に考えて自分に合っているのではないかと思ったからです。

どのような受験勉強をしたのですか。

トラウデン 私が出願したのは総合型選抜のFIT入試です。思い残すことはないと思えるほど充実した高校での活動を直接活かせるのではないかと考えたからです。グループディスカッションや、面接、小論文、講義を聞いた後の論述試験などがありましたが、準備として一番力を入れたのは、自分の言葉で話せるようにすることです。自分の経験や性格などを振り返り、客観的に分析した上で、母や先生に話すような練習をしました。この方法は、多くの知識が要求される受験勉強にも効果的だと思います。とりあえず覚え、その内容を人に説明するのです。すると、言葉に詰まったり、きちんと言えなかったりする部分が出てきます。それが弱い部分ですから、それをまた覚え直せばいいのです。一度自分の中に入れて、かみ砕いてから再び出すことで理解が深まっていくのではないかと思います。受験勉強にも、自分の言葉で話すことにもつながるおすすめの勉強法です。

TOPIC-5

今の仕事を続けながら将来の模索を続けたい

大学生になって、お仕事の内容は変わりましたか。

トラウデン 大学1~2年生の頃は、それほど仕事があったわけではありません。テレビの仕事も、レギュラーはスポーツ番組が1本で、あとは単発の番組に出る程度で、これで食べていけるという感じではまったくありませんでした。ところが、大学2年の秋にNHKの特設ニュース番組「祝賀御列の儀」に出演させていただいたことで、環境ががらりと変わりました。社会や政治の話題に関して発言の機会をいただけるようなお仕事がたくさん入るようになりました。かなり大きなターニングポイントだったと思っています。

今後の抱負をお聞かせください。

トラウデン 今のところは、確固たる将来の夢があるわけでありません。卒業後も当面は今のままの生活を続け、いただけるお仕事をきちんとこなしていくなかで、自分の可能性を探っていきたいと思っています。ただ、「がんばり過ぎなくていいよ」というメッセージは、いろいろな方法でお伝えしていきたいとは考えています。現代社会は、様々な情報に左右されて常に時間に追われているような生活を強いられます。だからこそ、自分の幸せとは何かをしっかり見つめる時間を大切にしてほしいと思います。

そのために、ご自身で何かなさっていることはありますか。

トラウデン 知り合いの農園を借りて、野菜作りを始めています。土や野菜に向き合っていると、時間がとてもゆっくり流れていきます。何ものにも代え難い贅沢な時間です。何かに追われるわけでもなく、じっくりと自分に向き合うことができます。遠い将来は、子どもたちと一緒に畑で土に触れ合えるようなワークショップのようなこともできたらいいなと夢想しています。

TOPIC-6

子どもの興味を広げるヒントを与えてほしい

新中1生に、アドバイスをお願いします。

トラウデン 高校受験がないというのはとてもラッキーなことだと思います。受験準備にかなりの時間をとられるため、自由に使える時間が増えるからです。その時間を上手く活用して好きなことをとことんやってみてください。私もやりたいことをやりたいようにやらせてもらいましたが、それらは間違いなく今の財産になっています。好きなことを追求していけば、たとえ別の形であったとしても、どこかで必ず生きてくると思います。将来の夢が決まっていなくても大丈夫。まだ、まったく焦る必要はありません。

保護者の方にも一言いただけますか。

トラウデン 子どもが興味を持つようなヒントをたくさん散りばめてほしいということです。私が両親に今でも感謝しているのは、日常会話や家庭生活のなかで、私の興味や関心を広げてくれるようなヒントをたくさんくれたことです。たとえば、父は映画が大好きで、昔の映画や、大人だったら見ておくべき作品などを、よく一緒に観ました。当時はわからなくても、大学生になって政治学で学ぶ内容と関連していることに気づくことがあり、たくさんのヒントをもらっていました。子どもの可能性を広げるようなきっかけを、たくさん作ってつくってあげることが、子どもたちの未来につながると思います。

モデル
トラウデン 直美(とらうでん・なおみ)さん

1999年京都府生まれ。2012年、13歳のときにミスコンテスト「ミス・ティーン・ジャパン」のグランプリを受賞。最年少で雑誌CanCamの専属モデルとなり、現在も活動中。同志社国際高校を経て、2018年慶應義塾大学法学部政治学科に入学。天皇陛下即位パレードの生中継番組でのコメントが注目され、モデルの仕事以外に、キャスターやレポーター、コメンテーターなどに活動の幅が広がる。