雑誌『CanCam』の専属モデルとして、テレビでもコメンテーターやキャスターなど幅広く活躍しているトラウデン直美さん。ドイツ人を父に持つ「ミックスルーツ」ならではの悩みを、モデルになってがむしゃらに頑張ることで克服したといいます。中高時代にどんなことを考え、どんな行動をしてきたのか振り返っていただき、新中1生へのエールをいただきました。

TOPIC-1

不登校をきっかけにミス・コンテストに応募

小学生の頃は、どんな子どもだったのですか。

トラウデン とても内気で引っ込み思案な性格でした。父がドイツ人で小さい頃から背が高く、見た目もみんなと少し違うことを自覚していたからです。まわりの人から「可愛い」と言われることにも違和感がありました。もちろん、そう言われるとうれしいのですが、当時の私にとって「可愛い」とは、小さくて愛嬌があって…というイメージであり、自分で思っている自分との間に大きなギャップがありました。ですから、なるべく人目につかないように、後ろの方へ、後ろの方へと下がっていくようなタイプでした。

現在のご活躍からは想像できませんが…。

トラウデン 本当です。内気でおとなしい性格だとからかいやすいためか、中学に入って軽いいじめに会い、お友だちとの関係がぎくしゃくしたりしました。環境が変わるとよくあることだとは思うのですが、学校に行きたくなくなり、とうとう週の半分くらいは学校を休むようになってしまいました。そんな引きこもり予備軍のような状態になった私を見かねた母が、この子はこんなところで萎んでしまうような子じゃないと、勝手に「ミス・ティーン・ジャパン」コンテストに応募したのです。

その提案をすんなりと受け入れたのですか。

トラウデン まさか(笑)。絶対にやりたくありませんでした。ですから母から応募のことを聞いたときも、「絶対に嫌だ」と泣きわめいて抵抗したほどです。すると母も「もしこれにチャレンジしないんだったら、ママはもう一生あなたとは口を利かないから」と、まったく譲りません。結局、「いいよ、わかったよ。どうせビリになるんだから」と半ばふてくされたように開き直って、しぶしぶ受けることにしました。

TOPIC-2

自信はついたものの新たな悔しさが…

そこで見事グランプリをとります。

トラウデン その後、13歳でモデルの仕事を始めるようになって、一種の自信のようなものが生まれてきたのは事実です。ただ、別の悩みというか、複雑な思いを抱くようにもなりました。CanCamという雑誌は、お友だちのお母さんたちも知っている雑誌だったため、「すごいね」とほめてはくれるのですが、同時に「可愛いんだから、もう勉強なんかしないでいいんじゃないの」「これで安泰だわね」「将来は決まっているようなものね」といったようなニュアンスの言葉を直接、間接にかけられるようにもなりました。それが悔しかったですね。

なぜ、悔しかったのですか。

トラウデン モデルになれたのは、私自身の努力が報われたからではありません。今でこそ、こうしたお仕事をしているため、身だしなみをきれいに整える努力はしていますが、当時はほとんど何もしていません。単なる見た目で判断されて、私の将来のことを勝手に決められることが悔しかったのです。ですから、中学時代は、「見た目だけじゃないんだ」と、よりいっそう勉強に力を入れるようになりました。

モデルの仕事と勉強の両立は大変でしたか。

トラウデン 週末は東京で撮影して、日曜日の夜に京都に戻ってくるという生活を、結局中高6年間続けることになりましたが、どっちも一生懸命やることで乗り切ってきました。もし両立させていなかったら、今の私はなかったと思います。モデルもたぶん途中で辞めていたと思いますし、大学受験にもそんなに真剣に取り組まなかったと思います。

TOPIC-3

コンプレックスをバネに充実させた高校時代

どうして同志社国際高校に進学したのですか。

トラウデン 自由な雰囲気のある高校に行きたいという理由と、何よりも英語を話せるようになりたいという理由で選びました。というのも、見た目のせいで「英語話せるんでしょう」とよく聞かれるのですが、実際には、日本生まれで日本育ちの中学生です。そのたびに「話せません」と答えるのが悔しくて、帰国子女が大半で英語教育に力を入れている同志社国際高校に進学しました。英語ができないことだったり、モデルだから勉強できなくてもいいと思われてしまったりという、一種のコンプレックスが私の原動力になっている気がします(笑)。

高校時代はどんな活動に力を入れたのですか。

トラウデン モデルの仕事を続けながら、学校では生徒会活動に積極的に参加したり、ドイツ語のスピーチコンテストに出場したり、小学生の頃から習っている馬術の大会に出場したり、校外のセミナーに参加したりと、本当にやり残したことはないと思えるほど充実した高校生活を送りました。高校時代が一番楽しかったと言い切れます。

大学進学についてはどのように考えていましたか。

トラウデン 高校時代の唯一の心残りともいえるのが、将来についてあまり深く考えなかったことです。ただ、大学でもう少し勉強したいということは考えていました。もし大学生になってそんなに仕事が来なくなったら、スパッと芸能の仕事を辞め、就職するか何か別道を選択しようと思っていました。そのためにも大学でしっかり勉強をしておかなければならないとは感じていました。