図書委員の仕事のひとつに、新しい本がきたらビニールのカバーを掛けて、番号を貼って、裏表紙の奥書のところにカードホルダーを貼るような作業があった。
今みたいにバーコードでコンピュータ管理なんかされていない時代、貸出はカードと交換で、日付のデート印で記録が行われていた。
先輩と私は、もちろん全部ではないが、面白そうな新刊が来るとはじめに読んでいた。これははっきりいって貸出外のずるである。カードホルダーを貼ってすぐ読むずる。
カウンター前の「新刊本コーナー」に紹介はあっても本がなければだいたいカウンターで先輩か私が隠し持っていた。
でも聞かれると、「あ、すみません、貸出中ですね~。」と嘘を言っていたのだった。
大概は一日二日で読み終わるのですぐ貸し出しができたこともあるが、私たちは悪びれることもなく、誰かに聞かれる度に、目配せしてちょっと肩をすくめて二人で合図しあっていた。
先輩はプラモを作るのも忙しかったので、読んでいない本は私に解説を聞いてきた。
これがなかなか大変で、あらすじをまとめる力が必要だった。
そんなものはなかったので、あとから「読んだけど違うじゃん。」と言われた事も。あらすじに解釈を混ぜてはいけなかったのだと思う。
ちょっとこれ押さえてて、とか言われて、ちっちゃなミサイルだかエンジンだかを持たされてする本の話。セメダインが臭かった。
自衛隊に話が決まったとき、「はじめは便所掃除とかやらされるらしい。」と言っていたのを思い出す。
「目が悪いから視力回復に行ってるんだ。」とも言っていた。
(眼が悪いとパイロットになれないというのは本当なのか、今でもわからない。コンタクト使用とかならいいのだろうか。)
たったひとつしか違わない人が、就職するという事実は結構重いはずなのに、私は夏休みにスーパーのレジのアルバイトをしたことはあっても社会というものがわかっておらず、このあと「もう学校に行かない」という人生がよく理解できていなかったように思う。
そして、3年生はだんだん学校に来なくなり、プラモ一機もらってそのままになった。
今ならメルアドの交換くらいしたと思う。
もう、名前も思い出せない先輩。
先輩の卒業アルバムの「図書委員」の写真の後列にはたぶん私が小さく写っている。
でも、私の卒業アルバムに、先輩はいない。
やっぱりちょっと好きだったのかもしれないな。
カテゴリ名: 学校生活