朝日小学生新聞特別増刊号 WILLナビNext

現状に不満ならば自分の頭で考えろ

勉強が嫌いだったから早く終わらせたかった

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──どのような中学校生活を送ったのですか。

ジェイソン 勉強は嫌いでした。嫌いなことをいつまでも残しておくのが嫌なので、早く終えて自由な時間を作りたいと思っていました。ですから、宿題は両親が学校に迎えに来るまでにやり終えて提出し、手ぶらで帰ることを毎日の目標にしていました。家ではまったく勉強はせず、テレビやゲーム、パソコンなどで遊んでいました。
 中学2年のとき、校長先生に「来年は中学3年ではなく、高校に行ってみようかな」と話したら、「じゃあ、やってみようか」と(笑)。それで1年飛び級して高校生になりました。

──高校の勉強についていけるほど優秀だったのですね。

ジェイソン 優秀かどうかわかりませんが、普通についていけました。完全に自慢ですが(笑)。アメリカでは授業レベルが初級、中級、上級に分かれていて、どの科目も上級レベルでした。しかも、上級レベルを終えるとAPテスト(大学の一般教養レベルの学力を測る試験)を受験でき、合格すると、大学の単位までもらえます。それで、高校生のうちに、大学の単位を1年分とってしまいました。飛び級もしていますから、17歳で大学2年生になりました。

──進学する大学はどのように選んだのですか。

ジェイソン アメリカの大学は州内からの進学だと学費が安くなるため、州内の大学で選びました。もう少しレベルの高い大学もありましたが、そこだと自分は平均レベルの学生になってしまうため、普通のレベルの大学を選びました。トップクラスの学生には、研究室への優先配属など様々な優遇策が用意されますから、どちらが自分のチャンスを増やすことができるかを考えて選択したわけです。

将来のキャリアを考えて日本語の授業を選択

──日本語とはどのようにして出会ったのですか。

ジェイソン コンピュータサイエンス学科の学生は、最低2年間の外国語の履修が義務づけられていました。将来はIT業界で活躍したいと考えていたので、他の学生との差別化を図るため、技術に強い国である日本の言葉を選択したのです。
 大学を1年間休学して、大手企業による音声認識のアルゴリズム研究に参加したこともあります。外国語が話せ、海外経験があり、研究開発の実務経験があるということを履歴書に書くことができれば、やはり他の学生との差別化が図れるからです。研究所は厚木にあり、ここで将来の奥さんになる人とも出会いました。ですから、芸名も厚木からとっています(笑)。

──大学卒業後は、どのようなキャリアを積まれたのですか。

ジェイソン アメリカの就職は、日本と違って企業ではなく職種で選びます。それで、プログラマーとして入社したのがゼネラル・エレクトリック(GE)でした。将来の幹部候補を養成する3年間の「リーダーシッププログラム」に入ることができ、様々な部署を経験しながら、大学院の修士号も取得させてもらいました。
 この期間は日常業務と大学院の勉強、独学での日本語能力検定1級への挑戦と、本当にハードな日々でした。人生で一番濃密な3年間だったといえます。
 もっとも、この3年間があったからこそ、時間の効率的な使い方を身につけることができたともいえます。現在、IT企業の経営とお笑い芸人を両立できているのは、そのおかげかもしれません。

──日本にはどのようなきっかけで来られたのですか。

ジェイソン このプログラムを終え、GEでもいい立場になったので、上司に自分の強みである日本語を使える仕事をしたいと願い出ました。しかし、現地採用の方針だからと却下されたため、「じゃあ、辞めます」(笑)。それでベンチャー企業に転職し、日本法人の立ち上げのため2011年に再来日しました。その後、現在の会社に転職して、現在に至っています。

──安定した企業に残るという選択肢はなかったのですか。

ジェイソン 安定は僕にとって最優先ではありません。それより自分の成長を優先したいという思いが強かったのです。結果的に、GEに残れば、シニアプログラマーなのに、いきなり日本支社長になったのですから、桁違いの成長スピードだったといえます。

突然の大ブレークに自分がいちばん驚いた

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──どうしてお笑いの世界に飛び込んだのでしょうか。

ジェイソン 「飛び込んだ」というほどの決心があったわけではありません。お笑いを見てて日本語の勉強をしていましたし、一般的な視聴者や観客としてお笑いが好きでした。とても楽しそうだから自分もやってみたいと思い、週末に所属事務所の養成所に1年間通いました。そのうちに客席がどっと湧くようになり、あっという間にテレビに出るようになって、自分がいちばん驚いています。

──ネタは全部ご自身で作られるのですか。

ジェイソン ネタの種(笑)は、自分で用意します。ただ、お客さんの前で披露するネタは、いろいろなアドバイスが加味されていますから、厳密にいえばすべて自分が作ったわけではありません。それに、自分ではお笑いの才能があるとは思っていません。とくに漢字ネタは、ネタですらありません。自分が漢字に対して思っていることを、少し大げさにしゃべっているだけで、伝統的なお笑いの手法を踏んでいるわけではありませんから。

──現在は、活躍の場を広げられていますね。

ジェイソン 最初はおもしろいからとお笑いをやっていましたが、最近は、お笑いは「エンタの神様」くらいしかやっていません。事務所の所属チームも「芸人」から「文化人」に変わり、ニュース番組のコメンテーターなどの仕事が増えてきました。与えられたチャンスを活かすことが、いろいろな成功の道につながっていくのではないかと考えており、柔軟な生き方を心がけるようにしています。

人間=仕事ではない。全部まじめにやる

──副業という言葉があまり好きではないと仰っています。

ジェイソン 日本人は「人間=仕事」という考え方をしがちですが、僕は違うと思います。もしそうなら、定年後はさびしい人生が待っていることになります。ちなみに、アメリカには定年という考え方はありません。定年は年齢差別であり違法です。結果を出し続けていればずっとその会社にいられます。こうした環境で育ったからでしょう。僕は会社の経営も、お笑いも、コメンテーターの仕事も全部まじめに取り組んでいます。もちろん家族との時間もできるだけ持つようにしています。

──そうした考え方や生き方が新鮮に映るのでしょうね。

ジェイソン テレビやSNSなどでいろいろと発信しているのは、「別の考え方」もあることを伝えたいと思っているからです。当然、様々な意見が寄せられます。「ここは日本なのだからアメリカの考え方が全部通ると思うなよ」などといった批判も来ます。しかし、僕は自分の考え方が100%正しいとは思っていません。そういう考え方「も」あるよということを言いたいだけなのです。

自分の頭で考えて幸せを追求しよう

──新中学生に向けて、アドバイスをお願いします

ジェイソン 現状に満足している人には、何もいうことはありません。しかし、不満を感じているなら、そのままにしてほしくはありません。実は、大学を卒業して企業に就職した人からも「自分は何をやっているのか分からなくなった、これからどうしたらいいか」といった相談を受けることもあります。しかし、それは自分で考えて生きてこなかった結果であり、責任の一端は日本の教育にもあると思っています。
 ですから、常に、自分は何をやっているのか、なぜそれをやっているのか、よりよい方法はないのか、と考えるようにしてください。幸せは、自分の人生に満足できるかどうかで決まると思っています。満足していればそれでいいですが、満足していないなら、どうすれば満足できるのか、自分の頭で考えて、幸せを追求してください。

──最後に、保護者に向けてメッセージをいただけますか。

ジェイソン 保護者には「本当に自分の子どもにいちばんいいことを考えていますか」という質問を送りたいと思います。みんながこうしているからうちも…といった教育をしている人が少なくないと感じているからです。親がまわりに流されていれば、結果的に子どももまわりに流された生き方をするようになってしまいます。
 たとえば、「英語が話せるような子どもにするにはどうしたらいいか」という相談もしばしば寄せられますが、そんなときはいつもこう問いかけます。「あなたは英語を話せますか」と。子どもは、英語ができない親を、英語を使わなくていい親を見ているのです。日本には「親の背を見て子は育つ」という言葉があるのですから、子どもに勉強させたかったら、まずご自身が真剣に勉強している姿を子どもに見せることだと思います。

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【プロフィール】

厚切りジェイソンさん

(本名:ジェイソン・デビッド・ダニエルソン)

1986年米国ミシガン州生まれ。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校エンジニアリング学部コンピュータサイエンス学科修士課程修了。外資系の日本法人設立のため来日し、2014年10月お笑い芸人としてデビュー。IT企業の役員。

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