朝日小学生新聞特別増刊号 WILLナビNext

「自律」が求められる中高時代 失敗を恐れず、チャレンジ精神で
「知識獲得型」から「課題発見解決型」への学力観の転換

 2014年12月22日、中央教育審議会が、高校教育、大学教育、大学入試の一体的改革に関する答申を公表しました。6年後の2020年度から、大学入試は抜本的な改革が進行する予定です。つまり、新中学生は、大学入試が劇的に変化する最初の年に受験を迎えることになります。それを念頭に置いて、これまでの中高生とは異なる心構えで6年間を過ごすことが大切です。

 では、大学入試はどのように変わるのでしょうか。一言でいえば、「覚える」から「考える」へ学力観の転換が図られます。今後のグローバル社会や日本の成熟化社会に対応するためには、「知識を獲得し、定着させる」従来型の学力だけでは不十分だからです。「知識を活用する力」や「自ら課題を発見・設定し、解決する力」が重要であり、中高段階からその力を身につけさせ、大学入試でも重視しようというのが、最大のねらいです。

 人間力の面でキーワードになるのは、「主体性」「多様性」「協働性」です。その背景には、2012年度のPISA(経済協力開発機構=OECD=が実施する学習到達度調査。3年ごとに15歳を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを測定)の結果を分析する中で見えてきた問題点があります。2009年度、2012年度の調査で、日本の生徒は、それまで成績を落としていた分野の成績が向上し、国際的に見てもトップクラスの学力を示しています。その一方で、自分はやれるのだという「自己信頼」「自己効力(セルフ・エフィカシー)」、および「教科に対する関心」が、欧米の生徒と比較して低いことが課題として浮上してきたのです。リスクを恐れずにチャレンジする気持ちがなければ、イノベーションを起こすことはできません。その勇気を生み出すには、自分はやれるという自信、すなわち「自己信頼」「自己効力」がこれまで以上に重要になるわけです。

 また、科学の高度化にともなって、中高や大学で学んだ知識・技術はすぐに陳腐化してしまう時代ですから、生涯にわたって「主体的」に学び続ける姿勢が求められます。「教科そのものに対する関心」を高めておかなければ、大学入試を突破した段階、あるいは大学卒業の段階で学びが集結してしまい、持続的に成長することはできません。さらに、「多様性」「協働性」も重要なポイントになります。グローバル社会においては、異質な言語、文化を有する様々な国の人々と共生し、協働する力が不可欠だからです。

行事やクラブ活動に積極的に参加して「自己効力」を高めよう

 中高6年間は、こうした新しい学力、新しい人間力を高めるように努力することが大切になります。具体的にどのような学びが重要になるのか、アドバイスしましょう。

 まず「自己信頼」「自己効力」を高めるために、授業だけでなく、学校行事やクラブ活動にも積極的に参加しましょう。その中で失敗してもいいから、全力を出し切る経験を積み重ねることが、自信につながっていきます。また、学校行事やクラブ活動は、学年の垣根を越えて、異質な考えを持つ仲間とのコミュニケーションの基本を学ぶ場でもあります。そのほか、本校で例をあげると、「プロジェクト・アドベンチャー」(約10人のグループを編成し、個の力では解決できないような課題に取り組む)、「ドラマエデュケーション(グループ皆でシナリオをつくり、ドラマとして演じる)といったプログラムを取り入れています。いずれもコミュニケーション、コラボレーションの大切さを体感するとともに、課題発見・解決能力も鍛えられるプログラム内容になっています。

 「教科に対する関心」は、日々の授業の中で育まれます。最も重要なのは、受け身ではなく、主体的に学び、考えようとする意欲です。近年は、多くの中高で、従来の一斉講義方式だけでなく、生徒参加型、双方向型のアクティブラーニングの導入が進行していますから、嫌いな教科でもそうした授業に積極的に参加することで、興味がわき上がり、掘り下げていくことができるはずです。

 もう1つ、ぜひ力を入れてほしいのが、中学からの新教科「英語」です。従来の大学入試では「読む」「書く」力が重視されてきましたが、皆さんが臨む大学入試では「話す」「聞く」も含めて、4技能を総合的に測る形に転換することは確実です。大学入試で必要だからというだけでなく、海外の大学進学をめざす場合はもちろん、たとえ国内の大学に入学した場合でも、半年から1年間程度の長期留学を希望するケースも出てくるでしょう。それを実現するためには、TOEFLで一定基準以上の成績を収める必要があります。さらに、難関大学の多くでは、英語で行われる専門科目の割合が増えています。中高時代から、とくに「話す」「聞く」力を高めておかなければ、そうした学びに対応できないのです。

 なお、冒頭に述べた中央教育審議会の答申を受けて、各大学がどのような入試改革を行うのか、その具体像が示されるのは、まだこれからです。そのため、不安に感じている人もいるかもしれません。けれども、これまで述べてきたように、大学入試改革がめざす学力、人間力とは何か、本質を把握して、それを高めることを意識して6年間を過ごせば、どのような形で入試が行われても、けっして恐れる必要はないのです。

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