朝日小学生新聞特別増刊号 WILLナビNext

医学部進学ガイド

他地域ほど加熱していない首都圏の医学部人気

 全国的には医学部人気が加熱していますが、首都圏はそれほどでもないのが実情です。

 これは、他地域の受験生が進学する大学の所在地にこだわりがなく、自分の学力に応じて全国各地から志望校を選択するのに対して、首都圏の受験生は圏外に出るのを嫌がる傾向があることが影響していると思われます。首都圏の国公立大医学部はいずれも超難関であるため、地方の医学部をターゲットにしない以上、どうしても医学部進学率は低くなるわけです。

 ただし、近年、首都圏の女子の間では医学部人気が急速に高まっています。これだけ不況が長引き、就職が厳しくなると、〝手に職〟を身につけることが重要になります。とくに女子は出産・育児などでいったん離職しなければならない可能性があります。仕事と家庭を両立させながら、高度な職業に携わるためには、医師免許などの国家資格を取得していることが有利になるという意識が高くなっているのでしょう。豊島岡、鴎友など、理系コースの生徒が多く、医学部への進学者も大幅に増加している女子校も見られるようになっています。

 また、女性医師を主人公としたNHKの連続ドラマ「梅ちゃん先生」や、iPS細胞でノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の活躍などは、おそらく大きな影響があると考えられ、今後は首都圏でもさらに医学部人気が上昇していく可能性が高いでしょう。

地域枠を中心として医学部の定員が増加

 医学部をめざす人にとっては朗報もあります。

 それは、ここ数年、医学部の定員が大幅に増加していることです。2013年度の定員は9041名で、07年度と比較して1416名も増加しています。これは平均的な定員の医学部が、10校程度新設されたのと同規模の定員増です〈表参照〉。さらに、16年には宮城県仙台市の東北薬科大に39年ぶりに医学部が新設されます。校名も東北医科薬科大に変わり、医学部の定員はさらに増えます。

 注目されるのは、こうした定員増の多くが地域枠に割り当てられていることです。地域枠とは、卒業後、一定期間、その地域の医療に従事することが入学条件となっている入試制度です。自治体などから奨学金が給付されるケースも少なくありません。推薦・AO入試として実施されるか、一般入試で募集される場合でも別枠で受験することになります。勤務地に制限があることを敬遠されて、いわゆる一般入試と比較すると、競争率は低めになっています。

 地域枠には首都圏の受験生は関係ないと考えがちかもしれませんが、実はそうとは限りません。確かに「その大学の所在地近隣の高校卒業者」であることが条件になっている場合もありますが、中には「卒業後、その地域にとどまって一定期間、地域医療に従事する」ことを約束すれば、他地域の受験生も受け入れているケースもあるのです。地域医療に情熱を持っているようなら、受験を一考する価値があるでしょう。

 もう一つ、朗報といえるのが、私立大医学部で学費値下げが相次いでいることです。首都圏では08年度に順天堂大学が値下げしたのに続き、多くの大学が学費値下げを実施しています。学費が値下げされると、難易度が高まることも事実ですが、経済的な面を考えるとターゲットになるはずです。さらに、私立大最難関の慶應義塾大医学部では、一般入試成績上位10名に年間200万円を給付(返済の必要なし)する奨学金制度を15年から始めます。

医学部医学科募集人員推移のグラフ

センター試験利用入試などを上手に活用しよう

 近年の医学部入試は、国公私立を問わず難化の一途をたどっています。もはや〝すべり止め校〟がまったく見当たらないような状況です。

 そうした厳しい入試を突破するためには、入試制度の多様化を上手に活用することが大切です。

 以前の医学部入試は、一般入試だけの一発勝負の様相を呈していたのですが、最近では推薦・AO入試の導入が進行していますし、私立大ではセンター試験利用入試も活発化しています。

 私立大のセンター試験利用入試のほとんどは、2次試験が面接・小論文だけで、学科試験が課されません。国公立大型の勉強をしてきた人でも十分に対応できます。受験チャンスの拡大の意味で、有効に活用することをお勧めします。

 また、入学した学校が、医学部を擁する附属校の場合は、内部推薦も視野に入れましょう。学年で上位の成績を収めていれば、医学部へも推薦入学できる制度を設けているところがほとんどだからです。

モチベーションを持続させることが重要

 さて、医学部をめざす上で、これからの6年間、どのような心構えが必要になるのでしょうか。

 最も重要なことは「医学部に行きたい」という気持ちがぶれないようにすることです。その意味では、周りに医学部志望者が多い学校に入学していれば、お互いに刺激しあうことによって、学びのモチベーションは持続しやすいでしょう。

 一方で、医学部志望者がそれほど多くない学校に進学した場合は、医系専門予備校に通うのも一つの方法です。同じ志を持つ友人ができる効果は大きいからです。

 そのほかにも医系専門予備校を活用するメリットはあります。というのも、とくに私立大の医学部の入試問題は独自性の強いものになっているのです。単に各教科の総合的な学力を高めていただけでは、そうしたクセのある問題に対応できません。少なくとも、高校3年次以降は、志望校の出題傾向を踏まえた対策学習が不可欠になります。在籍している学校の先生が、すべての医学部の入試問題の特徴を把握するのは困難です。ですから、めざす医学部が明確であれば、入試問題の細かな情報を収集・分析している医系専門予備校に通い、早めに対策学習を進めることが大切になるでしょう。

 また、国公立大医学部への進学を目標にしている場合は、絶対に苦手科目を作らないという意気込みが求められます。なぜなら、国公立大医学部の入試では、センター試験が課され、しかも85%以上の得点が要求されるからです。中には、センター試験の得点が低いと、2次試験自体を受けることができない〝2段階選抜〟という制度を設けているところもあります。

 苦手科目があったのでは、とても85%以上の得点をクリアすることはできませんから、どの教科もまんべんなく勉強して、少なくとも基礎的、標準的なレベルの問題は確実に解けるように努力しましょう。

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