WILLナビ:よみうりGENKI 次代を担う人材を育てる中高一貫校特集
受験生へのメッセージ
  1. 効率ばかりを求めると「教育」ではなくなる
  2. 「何が正しいのか」問い続けながら進むことが大事
  3. 偏差値だけでなく経験値も高まる塾の集団授業
効率ばかりを求めると
「教育」ではなくなる

 最近、教育の世界に「コストパフォーマンス」「最適化」など経済用語が持ち込まれるようになりました。でも教育が効率性の観点のみで語られることには強い違和感を覚えます。教育は結果が出るまでに時間がかかるものだからです。効率を上げようとすると、子どもたちを無駄なく失敗なくうまく動かす方向に圧力がかかります。そこに教育の本質があるとは思えません。
 もちろん学校と塾の違いはあります。学校は卒業して10年20年たってから良さがわかるところがあります。塾は入試の日に最大限の成果を出せるようにやっています。ですから「今すぐ成績を上げるには何をしたらいいか」と、即効性のある方法を求める保護者の方の気持ちはよくわかります。受験熱の高まりとともにそういう傾向が高まっているように思います。しかし、教育と即効性はそもそも相容れないものです。そればかりを求めてしまうと本当の力は身に付きません。

「何が正しいのか」
問い続けながら進むことが大事

 進学校の先生はよく「無駄が大事」とおっしゃいます。名門校ほど一見、受験とは直接関係ない環境やプログラムを用意しています。さまざまな体験を通して、失敗したり反省したりしながら仲間と共に何かを成し遂げていくことで、子どもは成長するからです。
 今のような変化の激しい時代は「これはこう」とはっきり言えないことばかりです。「何が正しいんだろう」と問い続けながら、「モヤモヤ」した気持ちを抱えて進んでいかなくてはなりません。そのためにはすぐに正解が分からない状況に耐えられる精神的なタフさが求められますし、仲間と協働して困難を乗り越えていく力も必要です。
 その意味で多様な経験を積ませてくれる私学には大きな魅力があります。よく「どの学校に行ったかより、何を学んだかが大事だ」と言われます。確かにそのとおりです。でもその学校でしか学べないことがあるのも事実です。確固たる教育目標の下、自分たちのコミュニティーの中で多様な経験をしながら仲間と学んでいく。そのようにして過ごす6年間は、人間性を形成するうえで貴重な期間になると思います。

偏差値だけでなく
経験値も高まる塾の集団授業

 ただ最近、オリンピックに関する事案などで、「オールドネットワーク」の悪い面を感じさせる問題が起きているのは残念なことです。男性中心の閉じられたコミュニティーの中で、暗黙の了解のうちに物事を進める。そのやり方や発想は今の時代にそぐわないのです。世の中にはいろいろな考え方があります。自分の意見を持つことも大事ですし、人が考えていることをしっかり聞くことも大切です。考え方の違いをすり合わせて、多様な意見を取り入れて、お互いが納得する方向に持っていく。手間の掛かることですが、その苦労を惜しんではいけません。
 その意味で、サピックスのように、講師を含め、みんなで意見を出し合って勉強を進めていけるのは、集団授業の良いところだと思います。友だちのアイデアを聞いて「そういう考え方もあるんだ」と知るところから世界は広がります。塾で学ぶ時間を、偏差値を上げるためだけに過ごすのは実にもったいないことです。サピックスでの学びが、変化の激しい時代に向き合う土台作りの一助になれば、こんなにうれしいことはありません。

髙宮 敏郎(たかみや・としろう)
1997年慶應義塾大学経済学部卒業後、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入社。2000年、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年9月から米国ペンシルベニア大学に留学して大学経営学を学び、博士(教育学)を取得。2004年12月に帰国後、同学園の財務統括責任者として従事し、2009年から現職。SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。
これからの時代に求められる人材像─中高一貫校で育む力─ 豊島岡女子学園中学校・高等学校 校長 竹鼻 志乃 先生 早稲田大学高等学院中学部 学院長 本杉 秀穂 先生 慶應義塾普通部 部長 荒川 昭 先生