WILLナビ:よみうりGENKI 次代を担う人材を育てる中高一貫校特集
次代のリーダーに求められる力とは
─私立 中高一貫校がいま、考えていること─
  1. 「探究活動」と「運針」で、「志力を持って未来を創る女性」をめざす
  2. 生徒からも好評を得た、オンラインならではの授業やテスト
  3. 2022年から高校募集を停止。ていねいな女子教育を実現
「探究活動」と「運針」で、「志力を持って未来を創る女性」をめざす
高1・2で「探究活動」の時間が設けられ、自分の興味あるテーマを深掘りし、問題解決能力に磨きをかける
 

 豊島岡女子学園は「道義実践」「勤勉努力」「一能専念」を教育方針に掲げる女子校です。1892年の創立以来、人として正しい道を歩み、優しさと思いやりの心を兼ね備えた「志力を持って未来を創る女性」の育成を実践しています。
 「志力を持って未来を創る女性」になるには、確かな知識と、他者と協働して課題に取り組むスキルを身につけなくてはなりません。そこで、本校では、高1・2で「探究活動」の時間を設けています。ここでは、テーマ探しから情報分析、実験、検証の一連の流れを学ぶ「探究リテラシー」から始まり、個人あるいはグループで、自分の興味のあるテーマについて深く掘り下げて研究を進めることで、問題解決能力を磨いていきます。本校では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月から休校に入りましたが、その期間は個人でリサーチクエスチョンを立てる時間に充ててもらいました。じっくり吟味したテーマを基に、研究計画書を作成し、これから本格的な探究活動に入っていきます。
 そのほか、本校の教育基盤を支える伝統的な取り組みの一つに、「運針」があります。これは、毎朝5分間、約1メートルのさらし布を赤い糸で黙々と縫い進めていくというもの。頭の中にある雑念を捨て、無心に作業することで、高い集中力が養われます。本来であれば、新入生には、入学式のときに運針道具一式を渡すのですが、今年の入学式はあいにくオンライン上での開催となりました。そのため、道具を新入生の自宅へ配送。毎朝の運針動画に加え、新入生用に運針の方法を撮影した動画も配信しました。通常授業が再開して、実際に中1の生徒たちが運針をしている様子を見ると、慣れた様子でてきぱきと針を動かしていてびっくり。休校中、彼女たちが自宅で運針にまじめに取り組んでいたことがわかり、とても感動しました。

生徒からも好評を得た、オンラインならではの授業やテスト
高校生はBYOD(Bring Your Own Device)を始めていたことから、オンライン授業への移行もスムーズに進んだ
 

 このように、思いがけず長い休校に入ってしまったり、入学式が対面で開催できなかったりと、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、本校でもさまざまな対応を迫られました。4月13日からは、生徒が何度でも授業動画を見ることができる、オンデマンド型のオンライン授業をスタート。生徒の負担や各家庭の視聴環境を考慮し、「一つの教科の動画は30分以内」「プリントアウトを前提とした課題は行わない」「ふだんの授業以上の負荷は掛けない」という独自のルールを作って実施していきました。分からないところがあれば、動画を止めて何度も見返したり、質問があればチャット機能で共有して対応したりと、オンラインのメリットを最大限に生かす使い方ができたので、普段の授業と遜色ないスピードで学習を進めることができました。そのときアップした動画は、対面授業が再開した今でも、復習のために見返す生徒がいるほど。意欲的な生徒が多いこともあり、こうしたオンデマンドの方法がうまくマッチしたように思います。
 また5月分の配信では、定着確認のためにオンライン上で課題やテストを行いました。出題は記述、選択などさまざま。教室で行うテストのように、バラエティーに富んだ問題を課すことができました。その一方で、数学では、「描いた図形を写真に撮って送る」といったオンラインならではの出題もあり、生徒たちには「新鮮で楽しかった」と好評でした。

2022年から高校募集を停止。ていねいな女子教育を実現
白布に赤糸で縫う豊島岡生の当たり前の「運針」
 

 授業以外にも、コロナ禍だからこそできた取り組みがあります。たとえば、ある生徒は、マスクを自作し、介護施設に寄付をしました。「外出できない」という自分たちの立場と、「運針ができる」という強みを掛け合わせて、何か困っている人の役に立てないかと考えたのです。後日、施設の方から感謝のお手紙が届き、自分たちの作ったマスクが施設の皆さんの助けになったことを知り、生徒はとても喜んでいました。
 また、ある生徒は、料理レシピサービス「クックパッド」が主催する、フードロスをテーマにした動画投稿コンテストの実行委員長として、休校期間をイベントの運営準備に充てました。このイベントには、多くの中高生がボランティアとして運営に携わっているのですが、それを取りまとめる委員長役を務めたのが本校の生徒です。不自由な生活に不満を抱くのではなく、「こんなときだからこそ、できることは何か」を考え、実行に移すことのできる生徒たちを、誇らしく思います。
 さて、本校は、2022年から高校入試を廃止し、完全な中高一貫校となります。高校募集はなくなりますが、中学入試の募集人数を増やすわけではありません。生徒総数が減少することによって、教室数にも余裕が出るので、少人数クラスや習熟度別授業を増やし、今まで以上に目の行き届いた、丁寧な教育ができるのではないかと思います。
 本校は生徒一人ひとりの努力を認め、さらに伸ばしていく学校です。その考え方は中学入試でも同じ。受験生の努力や、その場で試行錯誤できる力を評価したいと考えています。多くの受験生のチャレンジをお待ちしています。

これからの時代に求められる人材像─中高一貫校で育む力─ 豊島岡女子学園中学校・高等学校 校長 竹鼻 志乃 先生 早稲田大学高等学院中学部 学院長 本杉 秀穂 先生 慶應義塾普通部 部長 荒川 昭 先生