今の子は学力のベースとなる「力」がとても乏しくなっています。それには、親の責任も大きいと思います。同年代の友だちとしか話さなかったら、語彙が増えるわけがありません。語彙が不足していれば、新聞を読んでも本を読んでもわからない言葉ばかりです。意味がわかりませんから読む気が起きないのは当たり前です。
これは親戚や隣近所の人が家に上がるのを敬遠するようになった、セールスなどの人を家に入れなくなった、子連れの外出はいつも車……要するに子どもがよその大人と接する機会を奪ってきた親の責任です。
「基礎学力」を伸ばすための基本は家庭の中の会話です。まずこれが原点です。そのためには親子で顔を合わせる時間を増やさなければなりません。塾やお父さんの仕事の都合でどうしても夕食は銘々バラバラな「個食」になってしまうのなら、少なくとも朝食だけは必ず一緒に摂るようにしましょう。そもそも朝食を摂ることはきわめて重要なことなのです。学校は午前中に4時間の授業があります。つまり午前中が勝負なのです。食事を摂ることで体温が上がり、脳も働きます。食事をしないで行くことは、そもそも頭が働かない状態で行かせるということです。
また、読書も潜在的学力を高めるために重要な役割を果たします。けれども親が本を読まないで、子どもが読むわけがありません。居間にはさまざまなジャンルの本を置いておき、親自身が読んでいる姿を見せましょう。また、子どもも一緒に辞書を引く、世界地図で場所を探す、時刻表を調べるといった、子どもに自分で調べるクセをつけましょう。時間がかかっても、子どもにやらせることが大切です。
そしてまた、住宅事情の関係から、今の子は動物を飼ったり、植物を育てたりする経験が乏しくなっています。虫に触れなかったり、裸足で泥の中に入れなかったり……。教科の勉強以外の経験が乏しいと、面白がるもの、強い関心を抱くものが見つからなかったりします。子どもは大好きなものについてはいつまでも関わり続けます。そうしたこだわる経験があってはじめて、自分から調べる姿勢が自然と身につき、深い勉強につながります。
ですから、この大好きなものに出会うキッカケを低学年のうちに作ってあげていただきたいのです。長い目で見れば、テキストに向かうよりも、子どもの成長に影響します。
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