これまで中学受験におけるお父さんというと、仕事に追われてギリギリまで無関心でいて、いざ受験校を決めるという段になって急に、「なんでそんなところを受けるのだ?」「○○なんてお父さんのころはどうしようもない学校だったんだぞ!」なんてことを言い出し、子どものモチベーションを直前になってむちゃくちゃにしてしまうというパターンが多かったものです。
ところが昨今は、お父さんの参加が非常に増えています。このところビジネス誌までもが頻繁に「受験」や「わが子の学校選び」を特集していることもこうした現象を後押ししていると言えるでしょう。
お父さんが中学受験に参加することのメリットは、お母さんが目先の成績の上昇下降に一喜一憂して子どもを責めがちなときに、「今度がんばればいいから」と、子どもを救ってやれる点です。お母さんと同じ目線で子どもに向き合うのではなく、ゆったり構えたり、長い目で判断したりできてはじめて参加する意味があると言えます。また、学校選択にしても、女性の感じ方とは違った視点で眺め、その学校の別の顔を発見できるという長所があります。
しかし、問題がないわけではありません。合同説明会では、ブースに座っている先生が何教科の先生かわからないので、「4教科の過去問すべてに目を通して出かけた」。学校説明会では、「6年分の教科書・副教材をチェックした」「各学年すべての授業を見学した」。塾には、テストがあるたび即各教科の平均点を問い合わせ、「わが子の答案チェックと同時に弱点を確認した」。自宅では、すべてのテストの結果、志望校の配点・検査時間・出題傾向の分析、出願から入学手続きまでのスケジュール管理などを本業の仕事さながらにすべてエクセル入力。……そんな熱くなる、「受験にはまる父親」も目立つようになりました。
お母さんは生まれた時からわが子に接しているので、わが子の「実力」がなんとなくわかっています。保育園・幼稚園と、毎日のように送り迎えしていれば、他人の子も視野に入っています。受験生活に入れば入ったで、世の中にはできる子(精神年齢が高い子)がいるものだと実感し、だんだんに現実がわかってくるものです。
ところが、お父さんはよその子と接する機会がないので、まず他人の子は視野に入りません。わが子の客観的「実力」は、偏差値など紙の上でのことで、実感としては少しもわかっていないことが往々にしてあります。お父さんがついわが子に無理難題を言いがちな背景にはこうしたこともあるのです。優秀であったお父さんほど、「わが子が出来ないのは能力の問題ではなく、努力が足りないからだ」と思ってしまいます。
子どもの意思を無視した強引なやり方では子どもはついてきません。「○○しなさい」、「ダメじゃないか」……叱咤激励するだけでは意固地にさせるだけです。
熱くならず、わが子を冷静に見ながら受験生活を送ってください。 |
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