わが子であっても、きびしく言えない

小さい頃から甘やかして育ててきたせいもあり、わが子なのに厳しくしつけられません。どうしたらいいでしょうか。
  安田先生のアドバイス
親以外の大人とふれあう機会を作っては…

 子育てがとても難しい時代になりました。わが子であっても、きびしく言えない、きちんとしつけられない、今から態度を変えるのも難しい、そんなお父さん・お母さんが増えています。
 この間あるお母さんに会いました。その方は、半年前から夫とは別居していて、小学4年生の男の子は自分が引き取って面倒を見ているとのことでした。生意気盛りの年齢ですから、お母さんの言うことをまったく聞きません。父親は別居しているので、きびしく言ってくれる人がいません。
 たまたまその子が野球好きだったことから、地元の野球チームに入れたそうです。最初は、自分が働いていて留守がちなので、自分がいない時間を一緒に過ごしてくれる仲間がいてくれるだけでいいと思っていたそうです。ところが思わぬ副産物がありました。
 少年野球といえども体育会系です。監督の存在は絶対です。毎日始めと終わりには必ず挨拶することを求められます。先輩・後輩の関係もきっちりしています。口の利き方も気をつけなければなりません。それまでは挨拶ひとつしなかった子が、自分から声をかけてくるようになりました。母親に対してだけでなく、近所のおじさん・おばさんにも道で会うと挨拶するようになったそうです。
 自分が好きな野球の世界だから、その子は監督から怒鳴られても、時に手を挙げられても素直に受け止められたのでしょう。そのお母さんは「大成功だった」ととても喜んでいました。このように、子どもと接点がある世界(塾の先生でもOK)の人にしつけてもらうというのも、非常に効果のあるやり方です。
 親子は、長年ひとつ屋根の下で暮らしてきて、出来上がってしまった関係というものがどうしてもあります。今になってお互いの口の利き方を変える、習慣を変えるといっても、お互いが同時にそんな心境になるのは実際のところ無理な面があります。そうしたとき、お父さん・お母さんの弟や妹が案外有効です。お父さん・お母さんより若くて本人に近いだけに、本人も心を開きやすいようです。
 事情を話して、お子さんに言いたいことを代わりに言ってもらう。それだけでなく、おじさん・おばさんが気づいたことを遠慮なく本人に言ってもらうようにします。
 社会性を養ううえでもとてもいいのではないでしょうか。自分に関心を持ってくれる人がいることをふだんからわかっていれば、注意されたときなども素直に聞けます。ところがそうした人間関係を持ったことのない子どもは、見も知らぬ大人から注意されたりすると、とたんにパニックに陥って、話を聞くどころか逆に攻撃的になってしまいます。
 ふだんからいろんな大人と接することに慣れていれば、大人からいろんなことを学べます。大人に心を開いている子には、大人の方もその子が育つうえで力を貸してくれるはずです。是非そんな関係を作ってあげてください。
 


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