先日、ある女子校の校長先生から、こんな話を聞きました。その学校は、「自分たちが過ごす場所は、自分たちの手で清掃する」ことを教育方針にしているそうです。ですからトイレも、毎日生徒が交代で掃除しています。ところが今年の保護者会で、母親たちから「PTAでお金を出しますから、トイレ掃除は業者にやらせてください。」という声が出たそうです。学校としては、トイレ掃除も大事な生活指導の一つと考えていますからと、この申し出を断りました。校長はこう嘆いていました。「嫌なこと、面倒なことは、お金を払ってみんな外の人間に出そうとする。困った風潮です。」
以前はご家庭が掃除を業者に頼むなどということはありませんでした。引越しにしても、荷造りは極力家族でやったものです。それが最近のTVCMを見ていると、何から何まで引越し業者がやっていて、本人たちはからだを動かすだけ。
食事にしても、ファミレスの発達のお陰で、以前だったらたまにする程度だった外食が、ごく日常的な光景になっています。外食しないまでも、中食といって、デパートやスーパーの惣菜売り場に行けば、容器のまますぐ家で食べられる状態のものがそろっています。コンビニに行けば、温かなおでんまでもが手に入ります。包丁やまな板はむろん、食器さえも使わなくてすむ食生活。お宅の生活はどの程度進化(退化)していますか?
家事の多くを外注化するお母さんの姿を見て育った子が、これからいろんなことに出くわしたとき、自分自身でやり遂げようとするでしょうか。困難にぶつかったとき、人に頼らず自分自身の力で解決しようとするでしょうか。
おいしくなくてもお母さん自身が作ったもの、へたでもお母さんがかけてくれたアイロン、ピカピカでなくてもお母さんが掃除機を動かし、雑巾で拭く家の掃除。毎日のそうした姿が「自分のことは自分でやるものだ」という意識を子どもの中に育てるのだと思うのです。偉い人の立派な話よりも、お母さんの毎日の姿のほうが、何倍も子どもへの教育力を持っていると思います。お母さん自身がなるべく自分の手で家事をすると同時に、お子さんにもいろんなことをやらせましょう。
危なっかしいと、つい手を出してしまいがちです。壊されたり、汚されたりするのが嫌で、子どもがやろうとする前に止めてしまいがちです。何かにつけて口を出し、手をかけ、挙句の果てにストップさせる。そして自分自身もお金を払うことで他人の力を当てにする。
そんなお母さんから自立した子が育つはずがありません。
きついことを言いましたが、お母さんのふだんの生活ぶりが、いつのまにかお子さんに大きく影響するということを忘れないでください。
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