私は学生時代中古文学のゼミにいた。中古文学というのは古本のことなどではなく、平安時代の文学のことである。
最近、NHKだったか放送大学だったか忘れたが、中古よりもう少し前、奈良以前の上代文学の番組をやっていて、何の気なしに見ていたら、そのあまりのロマンチックさに打ちのめされてしまった。
万葉集の恋の歌である。いくつか書いてみる。
信濃なる 千曲の川の細石も 君し踏みてば 玉と拾はむ
(川原にあるただの小石でも、あなたが踏んだものならば、宝石だと思って拾いましょう。)
わが背子は 物な思ひそ 事しあらば 火にも水にも われなけなくに
(そんなに思い悩まないで下さい。いざとなったら火の中でも水の中でも飛び込む私がおりますよ。)
浅茅原 小野に標結ふ 空言も 逢はむと聞こせ 恋の慰に
(たとえ嘘でも会いましょうと言って下されば、その言葉を支えにこの恋心を癒すことが出来るでしょう。)
これだよ。やられた。日本人だって結構ロマンチストじゃないの、と思ってしまう。和歌をたしなむ、って素敵なことだなぁ。
今の若い子達はメールで恋人にどんなこと書いているんだろ。
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