11月9日(土)に特別実験講座「菌核を探せ!」を行い、中学1年生から3年生までの希望者38名が参加しました。
菌核とは、植物の根を取り巻くように共生する菌類の棲みかです。当日は、首都大学東京の渡邊眞紀子先生、茨城大学の成澤才彦先生、坂上伸生先生がご指導してくださいました。
今回は、新潟県の妙高山の森林土壌を持って来てくださいました。いよいよ菌核探しです。白い紙の上に薬さじで土壌をすくい取り、広げてピンセットや指先で探します。土には朽ちた落ち葉が混ざり、時には小さな土壌生物が出てきます。しっとりした黒い土の匂いを感じながら、皆菌核探しに夢中です。
しばらくするとシャーレには大小の菌核が集まりました。先生方は、様々な機器を持って来てくださり、見つかった菌核の数や重さ、大きさの測定に入りました。直径は1㎜台が普通ですが、今回は2㎜以上の大物も多くありました。
次は、これらの菌核がどの位の耐久性があるのか破壊実験で確かめました。渡邊先生ご自身が作られた実験装置を使って、どれだけの水の重さに耐えられるのか真剣に測定します。菌核は指で押した位ではつぶれません。破壊されたときはパチッと音がします。今回は最高で825gで粉々になりました。ずいぶん強度があるのが分かります。
最後は、成澤先生が菌核を含めた微生物のはたらき、他の生物との関係について興味深い話をしてくださいました。
植物と共生し、植物に利益をもたらす役割を持つ微生物の棲みかである菌核を、自分の目や手を使って探し出し、様々な測定を行うことによって、森林内での目に見えない自然の営みの一端に触れることができた一日となりました。
また今回は、本校の卒業生で大学1年生のTさんが手伝いに来てくれました。Tさんは中学時代にこの講座に参加したことで、微生物に関心をもち、進路を決めたそうです。この講座が生徒たちの志を育てる貴重な体験となっていることを実感します。
先生方、TAのみなさま、お忙しい中お越しくださり、丁寧なご指導をありがとうございました。
<後日出された生徒のレポートの一部をご紹介します>
【印象に残ったこと、普段の授業では経験できないこと】
◆人間の生活と菌などは結びついているということ。菌核は1000年も生きられ、大きい物から小さい物まで様々な大きさの菌核が存在するのだと分かった。(中1)
◆「菌核」というものは身近に存在し実際に触れることも見ることもできるということだ。普段の授業では教科書を見るだけだけど、今回の授業では、土から少しずつ丁寧にピンセットなどを使って実際に探すなど、なかなかできない貴重な体験ができた。(中1)
◆自分の好きなように実験ができる。順番も関係なく、やることも色々自由にすることができる。また、普段ならば注意深く観察などしない土のことをピックアップして学べたので面白かった。(中1)
◆大学の先生方のお話がとても面白かった。私が知らなった世界を教えてくれたのはとても楽しかった。私は菌核があまり見つけられなかったので先生に助けてもらったら先生は一瞬で菌核を見つけ出していて、すごいなと驚いた。以前、この講座を受けた大学1年生の元山脇生の先輩とも一緒になって探したのも印象に残った。(中1)
◆中学生のうちに大学の方の授業を受けられるということ自体がとても貴重だと思いました。通常の授業のような教科書にそって学ぶものではなく、全く新しいことを1から学ぶということがとても楽しく、より印象に残った。(中2)
【今回参加しなかったクラスメイトに伝えたいこと】
◆自然と人間の生活は繋がっているということを再認識してほしい。今は、地球温暖化など様々な環境問題を抱えている。これらは人間の影響と言っても過言ではない。そのため、まずは周囲の自然に着目し、「菌類ってこんな役割を持っているんだ!!」と私が感動したように、小さいことでも知っていくべきだと思う。自然の美しさを守るために、するべきことは何か考えてみるきっかけになってほしい。(中1)
◆「土は面白い」ということ。勉強でも自分の興味がある分野は勉強と思わないほど楽しくできるということ。今まで自分が知らなかったことを知っていくと、新しい興味をもてるということ。キノコは世界一大きいということ。(中1)
◆「菌」というと、○○菌など悪いイメージしかなく、触ってはいけないものと思うかもしれないけれど、菌核は身近に存在し、菌核がなければ植物は育たないし、植物には必ず菌核がいるということで、菌核はとても大事なものということを伝えたい。(中1)
◆普段の授業では味わえない新鮮さがあってとても楽しい。先生もやさしく教えてくださるし、面白い話もたくさん聞けるし、何よりも菌核を探すのが面白いから、良い体験になると思う。(中1)
◆教科書で学んだことの裏には意外なことがあるということ。植物の成長する条件には「水」「肥料」「日光」とあるが、その背景には「菌」がかくれている。さらに、世界最大の生物は?と聞かれると図鑑に載っているような「ゾウ」や「クジラ」を答えたくなるが、実はキノコであるということ。これを踏まえて、私は変な先入観を持たずに考えることの大切さを伝えたいと思った。「菌」は汚いというイメージがつきものである。でも視点を変えてみると「菌」は植物が生きるための役割を補ってくれてもいる。実際に見て、自分のイメージを持つことが重要なのだと思う。(中2)
カテゴリ名: 学校生活
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