背中を痛めて先週は整体に一日おきくらいに通っていた。
ベッドが数台と、男性の先生がふたり。いついっても誰か患者さんがいるというそれなりに流行っている整骨院だ。
治療は背中を電気で温めてから、パルスの出るような電極をはったり、バイブレータのようなもので血行をよくしたりしたあとに、これまた電気の通る手袋をしてマッサージをしてくれたりテーピングをはったりするのだが、たまたま午前の最終患者だったことが二回あって、マッサージをしながら、院長先生に業務拡張についての話をされた。相談というほどのことではないが、軽いリサーチというところだと思う。
今は普通の整骨院で、柔道整復師、鍼灸師の資格で業務をしているが、美容分野に進出したいと思っているそうで、私くらいの年齢層の女性は、30分5,250円で小顔矯正とか、骨盤矯正、歩き方教室をやったら来てくれるだろうかというような話だった。
女性なら誰でも、数回の施術でウエストが細くなるとか、骨盤の歪みが治るとか、歩き方でO脚が治るというのには興味はある、と答えておいた。
ただし、この界隈ではどうか、とちょっと辛口の意見も言ってみた。普通の下町の住宅街だし、患者さんは私より年配の方が多い。
今この時代にあって、人から1回で5,000円とるのは大変ですよ、と。
そうしたら、なんとその先生はその業務を携えて今のところをたたみ、銀座でやりたいのだそうだ。
私は男性が仕事の夢を語るのが大好きなのだが、北海道から出てきたというこの先生、大丈夫かな、とちょっと思った。
銀座で商売をするというのは誰でも憧れる。しかしあの目の玉の飛び出るような家賃に縛られて固定費がキツイという事実をもっと認識した方がいいと思う。
一日何人施術が出来るのか知らないが、5,000円×10人として一日の売上高が5万円。月20日稼働してこれでやっとひと月の売上高が100万円だ。
年間にして1,200万。これで例えば月額30万家賃を払ったら人は一人も雇えない。
機材の設備投資に内装工事、テナントの保証料を無借金で始めたとしても、月々の家賃が相当額かかる。新規顧客開拓のためにはそれなりの広告宣伝費もかかるし、従業員の福利厚生、退職金ややめるときの原状回復工事費もとっておかなくてはならない。
こんな話は夢を潰すことになるので全くしなかった。本気で聞かせろというならいくらでもするが、マッサージが長くなる。
うちは自営業だが、実は銀座の家賃に苦しむ一人。はじめから銀座ではなく、あちこち移りながら現在に至っている。
一人では到底借りられないので隣接業務の人たちとオフィスをシェアして借りている。家賃と経費の一部は按分で、そうでなければ絶対に無理である。内装工事費や保証金は借金で、ずっと返し続けている。
すでに整骨院のHPは美容仕様に変え、宣伝を始めたそうだが、銀座の移転はもっと先で、とりあえずこの下町で反応をみたいのだそうだ。
マッサージという体に触る職業で、人当たりが良く清潔感がありいやらしい感じが全くしない安心な先生なのだが、こんな調子で来る人来る人に美容はどうでしょう、受けてみませんか、とやっていたら人は離れてしまうと思う。
商売を高額所得者相手にターゲットを絞るのがいいのか、あるいは広く浅くがいいのか私にはわからないが、今まで通り年配の方の腰痛とか、奥様方の肩こりとか、高校生のスポーツ障害などを下町で看て、地元で人気のある先生でいた方がいいのに、とちょっと思う。近くに同業が沢山ある中でも人気がある院なのに。
地道にやってきたからこその今であり、その素晴らしさはご自分の努力の成果なのだが、地道というのは飽きてしまうものなのか?
先生痛いよ、と詰めかけるおばあさんやおじさんはどうなるのか。
野望も否定できないし、さて次回聞かれたらなんと言えばいいのやら。
銀座はお金持ちが集まる、という単純な考えならやめた方がいい。銀座で働く人達の多くは普通のサラリーマンとOLです。自営業も借金いっぱいです。
カテゴリ名: ひとりごと