朝日小学生新聞特別増刊号 WILLナビNext

医学部進学ガイド

社会貢献への意欲から医学部をめざす若者が増加

 2015年度あたりから、大学入試は「文高理低」の様相を呈しています。一時期の就職氷河期から抜け出して、多くの企業が文系学部出身者の採用を活発化させていることが要因と考えられます。

 けれども、そんな全体的な傾向とは一線を画して、医学部をはじめとする医療系学部の人気は続いています。2016年度も、国立医学部の志願者数は、センター試験の理系科目の平均点が低下したため、弱気になった受験生が他学部に変更したケースが見られたことから、若干減少しましたが、私立医学部の志願者数は増加しています。今後も根強い人気をキープすると予想されます。

 その最大の要因は、医学部ならば、卒業して国家試験に合格しさえすれば、収入も社会的地位も高い医師という職業が保証されるということです。そこに魅力を感じる受験生は多いでしょう。理工学部に進学しても、有力企業に就職するためには、大学院修士課程修了が条件のようになっています。同じ6年間の学びが要求されるのなら、医学部に行こうという考え方もあるでしょう。

 また、近年、大きな震災が頻発したこともあって、最近の若者には「困っている人を助けたい」という社会貢献、社会奉仕の意欲が高まっています。その純粋な気持ちが、医学部に進みたいという目的意識につながった若者が増えることは、とても望ましい状況だと感じています。

2016年 首都圏 国公立・私立医学部医学科合格者数ランキング

国公立大医学部医学科合格者数ベスト20

順位 設置 高校 所在地 国公立大
医(医)
合格者数

1 開成 東京 59
2 海城 東京 40
3 東京学芸大附 東京 39
4 筑波大附駒場 東京 38
5 桜蔭 東京 35
6 渋谷教育学園幕張 千葉 34
7   日比谷 東京 30
8 麻布 東京 29
8 巣鴨 東京 29
10 豊島岡女子学園 東京 28
11   宇都宮 栃木 26
12   水戸第一 茨城 25
12   浦和(県立) 埼玉 25
14 栄光学園 神奈川 24
15   前橋(県立) 群馬 23
15 駒場東邦 東京 23
17 筑波大附 東京 21
17 聖光学院 神奈川 21
19 東邦大付東邦 千葉 20
20   西 東京 19

※は国立、◎は私立、無印は公立校を表す

私立大+防衛医大医学部医学科合格者数ベスト20

順位 設置 高校 所在地 私立大+
防衛医医
(医)
合格者数
1 豊島岡女子学園 東京 81
2 開成 東京 69
3 桜蔭 東京 61
3 海城 東京 61
5 渋谷教育学園幕張 千葉 58
6 桐蔭学園 神奈川 57
7 暁星 東京 56
8 巣鴨 東京 53
9 駒場東邦 東京 52
10 東京学芸大附 東京 49
11 東邦大付東邦 千葉 42
12 麻布 東京 40
13 栄東 埼玉 39
13   日比谷 東京 39
15 開智 埼玉 38
16 江戸川学園取手 茨城 37
16 秀明 埼玉 37
16 筑波大附 東京 37
16 城北(私立) 東京 37
20   宇都宮 栃木 35
20 本郷 東京 35

地域枠を中心として医学部の定員が増加

 医学部をめざす人にとっては朗報もあります。

 それは、ここ数年、医学部の定員が大幅に増加していることです。2017年度の定員は9420名と、過去最高で、10年前の2007年度と比較して1795名も増加しています。2016年度には実に37年ぶりに東北医科薬科大学に医学部が新設され、爆発的な人気を集めました。2017年度も、国際医療福祉大学が、特区「東京圏」内の千葉県成田市に医学部を新設します。

 もっとも、新中学生の皆さんが、大学入試を迎える頃に、医学部の定員がどうなっているか、不透明な部分もあります。日本が人口減少期に入り、医師過剰になりつつあるという指摘が見られるようになっているからです。けれども、私はそれほど極端な定員削減は行われない可能性が高いと予想しています。なぜなら、今後、団塊の世代が高齢者になり、医師をやめる人が急増します。人口が減少しても、経済力を維持するために大量の外国人労働者が流入してきます。結果として、必要とされる医師数に大きな変化はないと考えられるからです。

 もう一つ、定員に関して注目しておきたいのは、近年の医学部定員増の多くが、地域枠に当てられているということです。地域枠とは、卒業後、一定期間、指定地域の医療に従事することが条件となる入試です。当該地域の自治体から奨学金が給付されることもあります。多くの医師が都市部の病院を希望し、地域医療の担い手が不足しているという課題を解決するために設けられた制度です。

 首都圏の受験生に地域枠は関係ないと思うかもしれませんが、実はそうとは限りません。「その大学の所在地近隣の高校卒業者」が出願条件になっている場合もありますが、中には「卒業後の一定期間、その地域に留まって、地域医療に従事する」ことを約束すれば、他地域の受験生を受け入れているケースもあるのです。

 地域枠は、いわゆる一般入試と比較すると、競争率やボーダーラインが低めになっています。地域医療に関心があるなら、受験を一考する価値があるでしょう。

 ただし、義務づけられた期間を終えると、地域医療から離れ、都市部に移る医師が少なくないとの声も聞かれます。当然のことながら、各地域にとっては、長く診てもらえる医師を求めているでしょう。地域枠を受験するのなら、相応の覚悟を持つことが望まれます。

医学部医学科 募集人員・志願者数推移

医学部医学科 募集人員・志願者数推移

推薦・AO入試も視野に入れた対策を

  さらに、今後の医学部志望者にとって目配りしておく必要がある動きも出てきています。

 2016年度、東大が推薦入試、京大が特色入試を新たに導入しました。国立大学協会では、近い将来、推薦・AO入試の定員比率を3割に拡充する意向を表明しています。私はそこまでの比率になる可能性は低いと予想していますが、推薦・AO入試が拡充の方向にあることは間違いありません。

 そうなれば、一般入試の定員は削減され、これまで以上に「狭き門」になります。今後の医学部志望者は、推薦・AO入試も視野に入れた受験戦略を立てる必要があります。ただし、推薦・AO入試を受けるためには、事前に様々な対応が求められますから、学力向上に専念して、一般入試一本で勝負するのもまた、選択肢になると思われます。

 推薦・AO入試をめざすためには、すべての教科の授業を真面目に受けて、定期テスト対策も万全で臨むことが大切です。評定平均値が出願条件になるからです。当然、医学部ではかなり高い成績が要求されます。また、部活動や学校行事にも積極的に取り組まなければ、学校から推薦してもらえません。難関大学の医学部の場合は、数学オリンピックなどのコンテストや、SSHなどの活動で高い評価を得ていなければ、出願条件を満たすことができませんから、自分の興味のある分野を深める努力も求められます。つまり、様々な意味で、中高生活をかなり充実させることが大切になります。

様々な本を読んで視野を広げよう

 医師をめざすのなら、中高時代にぜひ多様なジャンルの本を読んでほしいと思います。視野を広げる中で、「なぜ医師をめざすのか」「自分は本当に医師の世界に興味を持っているのか、適性はあるのか」、自分を見つめ直し、目的意識を明確にすることが重要です。「成績がいいから」「偏差値が高いから」という理由で、何となく医師になったのでは、将来、自分も患者さんも不幸になるだけです。

 医師になる目的意識が明確になったら、それを意識した中高生活を送りましょう。「きちんと挨拶する」「電車内では高齢者に席を譲る」。普段の心がけが、患者さんを思いやる姿勢を育みます。NHKでは「総合診療医ドクターG」という患者さんの症状から病名を探り当てる番組を放送しています。それを見ると、医師は患者さんの細かい仕種を観察し、言葉から情報を引き出していることが分かり、感動します。中高時代から、将来の問診力につながるコミュニケーション力、観察力も意識的に高めるようにしましょう。医学部は、入学した段階で、将来の職業が決まる学部です。こうして目的意識をはっきりさせ、覚悟を持って入学することが重要なのです。

ページTOP