森上先生注目!高校特集

森上先生からのメッセージ

頑張れ!! 高校受験生

 実りの秋を迎え、中学3年生の皆さんにとっては、志望校を決定する時期が近づいてきました。
 すでに、夏休みの間に、学校フェアや学校説明会などに参加した人も多いと思いますが、秋以降にもそうした場は数多く設けられています。ぜひ積極的に出かけて、自分にあった学校を探すようにしましょう。
 いま高校は、公立、私立を問わず、大きな転換期にあります。そこで、「高校入試の現状」と「受験校選びのポイント」について紹介しますので参考にしてください。

高校入試・教育システムの現状
都立入試改革も、大きな変動なし

 平成28年度入試において、東京の都立高校で一般入試の選抜方法が変わりました。学力検査の出題および対策方法はあまり変わりませんが、変更内容は大きく以下の3つでした。

  • ① 学力検査の教科数等(全日課程の第1次募集・分割前募集では、原則として全都立高校が5教科(国数英社理)実施)
  • ② 学力検査と調査書の比率(全日制第1次募集・分割前期募集では、学力検査:調査書=「7:3(体育や芸術コースは6:4)」、分割後期募集・第2次募集は「6:4」)
  • ③ 調査書点算出のための換算方法(学力検査を実施する教科の評定は1倍、学力検査を実施しない教科の評定は2倍)
 この改革による変動は、全日制の平均実質倍率が1.42倍(昨年1.41倍)とさほど大きくありませんでした。
 なお神奈川では、2013年度から、前期・後期に分かれていた試験が、共通選抜1回のみの入試になりました。埼玉でも、同様に、2012年度から前期・後期試験が一本化されています。両県ともに受験チャンスが1回になったわけです。そのほか、千葉では、2011年度から、特色化選抜が前期選抜、一般入試が後期選抜と名称が変更され、前期選抜でも学力検査が課されるようになっています。

「就学支援金」制度により、学校の選択幅が広がる

 このように、神奈川、埼玉の公立高校の一般入試では、受験チャンスが1回になっています。また、近年各都県の公立高校の実質倍率は、全体的としては安定していますが高校別に見ると変動があります。複数受験が可能な都立高校でも、2016年度は100名以上の不合格者を出した高校が57校(定時制・高専含む)にのぼっています。また、日比谷、戸山、西など進学重点校だけでなく、地域2、3番手校も人気化し倍率が上昇傾向にあります。そのため特に人気公立校を受検する受検生は、併願校の選択が重要になります。
 ここで平成22年度より私立高校等に在学する生徒が、家庭の状況に関わらず安心して勉学に打ち込めるよう、高等学校等就学支援金制度が導入されています。また高額所得者にも支給していた分をカットすることで浮かせた財源で、中下位所得者層を対象に、「就学支援金」を増額し私立高校の授業料相当額もカバーできるようになりました。このため中下位所得者層は経済的な理由だけで公立高校を選ぶ必要はなくなり、より幅広い学校選択が可能になっています。これを受けて、面倒見の良さや柔軟な教育等が行われている私立校の人気も徐々に高まってきています。

受験校選びのポイント
留学制度の充実度など、教育システムの特色をよく調べよう

 高校入試は内申点と偏差値によって、ある程度自分の合格圏が見えてしまう入試です。中学入試や大学入試のような"一発逆転"の可能性は低いといえるかもしれません。だからといって「自分が合格できるのは、この高校だけだから」と、早めにあきらめて、選択肢を狭めてしまう必要はありません。むしろ合格可能な中で、どの高校を選ぶのか、とても重要なポイントになるのです。
 近年、とくに私立高校では多様な教育改革が進行しています。インターネットなどで情報を集めるとともに、学校説明会や体験入学などにも積極的に参加して、バラエティーに富んだ私立高校の教育システムをしっかりチェックした上で、受験校を選ぶようにしましょう。なお、男子校や女子校の共学化や校舎施設・制服のリニューアル、推薦基準の変更などにより、人気が大きく変動することがあります。


 2014年春よりスーパーグローバルハイスクール事業がスタートしました。国が進める「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」において、『グローバル化に対応した教育を行い、高校段階から世界と戦えるグローバル・リーダーを育てる』ため、文部科学省によって進められています。
 環境や資源、伝染病といった問題には、国境を越えた世界規模での取組みが必要となります。これらの問題は日本だけで解決できるものではなく、関係する他国と広い分野で協働していく必要があります。
 スーパーグローバルハイスクール(以下SGH)指定校では、「社会課題に対する関心と深い教養」「コミュニケーション能力」「問題解決力」を身につけることを目標にしています。グローバルに活躍するため英語の活用能力を高めることは重要ですが、単に英語力を向上させるだけでなく、課題研究を柱に据えた探求型学習などを通して3つの力を身につけることにつなげます。
 私がとくに注目してほしいと考えているのが、グローバル時代に対応した教育がどの程度充実しているかです。これからの社会を生きる皆さんは、海外の人々と協力して物事を進める姿勢が求められます。「使える英語」教育や、海外体験のチャンスが豊富な高校に進学すれば、それを可能にする能力が高められるはずです。東京都では、留学する生徒に支援金を支給するなど、バックアップ体制を強化しており、ぜひ若い時期に異文化を体感する機会を持ってほしいと思います。
 なお、2016年度に1都3県で新たに指定を受けた学校は、埼玉県立浦和第一女子高校、千葉県立佐倉高校、東京芸術大学音楽学部附属音楽高校、創価高校でした。またSGH事業を踏まえたグローバル・リーダー育成に資する教育の開発・実践に取り組むSGHアソシエイト校には、埼玉では立教新座中高、千葉は松戸市立松戸高校、暁星国際高校、東京は東京学芸大学附属高校、啓明学園中高、東洋英和女学院中高、大妻中野中高、文京学院大学女子中高、神奈川は神奈川学園中高、湘南学園中高、横浜女学院高校が指定されています。

全体的な学力を高めるとともに、過去問を活用した学習にも力を入れよう

 秋からの学習では、全体的な学力を向上させるとともに、そろそろ受験する高校の過去問にも目を通して、出題傾向・形式に沿った対策学習を進める必要があります。
 とくに重視してほしいのが英語です。それも「読む」「書く」能力だけでなく、「話す」「聞く」能力を意識的に高めるようにしましょう。首都圏の公立高校入試では、英語で必ずヒヤリングが課されるからです。
 ヒアリング力を高めるために、お勧めしたいのがNHKの『基礎英語』です。高校3年生まで継続して取り組んでいけば、どんな難関大学入試の英語でもクリアできるといわれるほど評価が高いのです。中学入学当初は利用していた人が多いと思いますが、その後、やめてしまったケースもあるでしょう。これからでもいいので、入試本番まで継続して聞くようにすれば、必ず大きな力になります。