朝日小学生新聞特別増刊号 WILLナビFRONTIER

中学受験を通して身につけたこと

公式を覚える前に自分で解く力をつけた

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── 中学受験を意識するようになったのはいつ頃からですか。

八田 小さい頃から、4歳上の姉と一緒に、自宅で母に勉強を教わっていました。姉の教科書を使って、どんどん先に進めていましたから、予習は万全で、学校でどの教科にも苦手意識を感じたことはありませんでした。そのため、自然と勉強することが好きになっていった感じです。
 母は、単に勉強を強制するのではなく、「将来のために必要」という話もしてくれました。身近な人を例に、この職業に就くためにはこんな勉強が必要になるといった話です。そして、必ず最後には「東大に入っておけば大丈夫」と(笑)。実際にはそんなこともないのですが……。当時は将来の夢が見えていたわけではありませんが、勉強の必要性は身にしみついていった気がします。勉強が必要になるといった話です。そして、必ず最後には「東大に入っておけば大丈夫」と(笑)。実際にはそんなこともないのですが……。当時は将来の夢が見えていたわけではありませんが、勉強の必要性は身にしみついていった気がします。

── 塾には通わなかったのですか。

八田 小学校6年生から通いました。遅めと感じられるかもしれませんが、私にとってはそれがよかったと思っています。塾では受験用のテクニックが解説されます。それまでの私は、時計算、植木算といった言葉自体を知りませんでした。問題を見て、正解することはできても、回りくどい方法で解いていることも多く、塾で教わった効率的な解法は新鮮でした。けれども、最初から公式を覚えて、それに当てはめる習慣が身についてしまっていたら、原理が分からないまま機械的に解くだけになってしまいます。それに、難関中学の入試問題は、単純にパターンに当てはめることができない変化球の問題も少なくありません。塾に通う前に力づくで解いていたことは、どんな問題が出されても、自分なりに工夫して考える力につながっていたわけで、意義があったと感じています。

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漫画、テレビゲームは禁止。学習漫画を読みこむ

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── 塾に通ってよかったと感じるのはどんな点でしょうか。

八田 それなりに成績はよくても、あまり受験熱の高くない小学校だったので、自分のポジションが分からないという不安がありました。塾には同じ志望校の子どもがたくさんいますから、大いに刺激になりました。算数の授業では、解けた順に先生に提出する方法をとっており、友人たちに負けたくない、一番に持っていきたいと競争意識も芽生えまし受験勉強では、そうした競い合う気持ちも大切です。
 塾の先生方の面倒見もよく、合格鉢巻きなどの受験応援グッズを配布したり、正解者にシールを張ってくれたりなど、やる気をかき立てる様々な工夫がこらされており、楽しく勉強できたという印象です。

── そのほか、中学入試に向けた勉強で効果的だったものはありますか。

八田 私の家は、漫画、テレビゲームが禁止で、その代わりに歴史、科学などの学習漫画がそろっていました。漫画といえばそれしかないので、くり返し読みこみました。児童文学全集や伝記物もたくさんあり、本を読むのが大好きになっていきました。国語の教科書も、新学期に配られるとすぐに全部読んでしまっていたほどです。母からは「本ばかり読んでいてはダメ」とよくおこられましたが、私にとっては「母におこられるぐらいだから、読書は遊びの一種で、楽しいもの」といった感じでした。読書量のおかげで、国語に関しては特別な勉強は必要ありませんでしたね

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基礎から体系的に学べる、中高一貫校の教育システム

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── 中学入学後の思い出を聞かせてください。

八田 中高一貫校のカリキュラムは、とても系統立ったものになっています。たとえば化学では、中学1年次に、原子の仕組みなど、化学の基本原理から学びます。意味も分からないままに丸暗記させるような教育ではないのです。本質的なところから深く理解できるところが素晴らしいと思います。

── 中高一貫校のカリキュラムはかなり前倒しになっていますが、消化不良を感じることはありませんでしたか。

八田 公立校に進むと、中学と高校で同じような内容を再度勉強することもあります。もちろん、レベルに多少違いはありますが……。一方で、中高一貫校の場合は、6年間一貫のメリットを生かして、学ぶ内容の重複が排除されています。その無駄がないから、進度が速まるわけで、過度な詰め込みで消化不良におちいったという感覚はまったくありません。理解が不足している場合は、補習などできめ細かなフォローも行われていました。

── 東大受験に向けての勉強についても聞かせてください。

八田 私は高校から国立大の付属校に移りました。あまり強烈な受験指導を行わない高校なので、伸び伸びとした高校生活を送りました。高校3年生から塾に通いましたが、周囲の生徒の学力に圧倒され、早々と現役合格をあきらめてしまいました。今ふり返ると、あの時点で断念せず、もっと本気でがんばるべきだったと後悔していますが……。
 その分、浪人生活に入ってからの1年間は必死で勉強しました。予備校では、与えられた時間割り通りではなく、自分に必要な授業だけを受講。空いた時間は、友人たちと一緒に喫茶店で勉強していました。というのも、私は静かすぎると逆に落ち着かなくなるタイプなのです。当初は予備校の自習室も利用しましたが、私語厳禁ですし、シーンとしている中でテキストのページをめくる音にも気をつかうようになってしまいます。喫茶店で友人たちと一緒に勉強すると、同じ問題を解いて、解答を照らし合わせて、思いもよらない解き方を知り、参考になることもよくありました。

 

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あきらめると思考が停止してしまう

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── 中学受験でがんばったことが、今に役立っていることはありますか。

八田 4教科を幅広く勉強したことがよかったと思います。中学、高校と学年が上がるにつれて、文系、理系いずれかに特化した学習になっていきます。東大の理系学生を見ていても、社会のことにうといと感じるのは、受験で社会科が課されない中学の出身者に多いように感じます。脳細胞が若く、柔軟な吸収力がある小学生のうちに、幅広く学んだことは有意義だったと思います。

── これから中学受験をめざす小学生にアドバイスをお願いします。

八田 最も大切なのは自信を持つことです。私が東大受験の時に感じたのは、最初から解けない問題だと思うと、思考が停止してしまうということ。難しく見える問題でも、自分ならできると自己暗示をかければ、意外に簡単なところに解法の糸口が見つかるものです。もちろん、それだけの自信をつけるには、それまでに一生懸命がんばったという裏付けが必要になるでしょう。

── 最後に、保護者の方々に向けてメッセージをお願いします。

八田 あまり子どもにプレッシャーをかけないでほしいですね。どんな子どもでも入試に対して不安を感じているものです。保護者まで気を張りつめていると、子どもによけいな負担がかかってしまいます。温かくはげます気持ちが大切だと思います。

 

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